譲渡制限付株式報酬の損金算入時期

1.概要

譲渡制限付株式報酬の損金算入時期については譲渡制限付株式報酬のうち、特定譲渡制限付株式に係る株式報酬については特段の定めがある。譲渡制限付株式とは次に掲げる要件に該当する株式をいう(法令111条の2第1項)。

  • 譲渡(担保権の設定その他の処分を含む。)についての制限がされており、かつ、譲渡制限期間が設けられていること
  • 内国法人が個人から役務の提供を受け、その対価として株式を交付した場合において、個人から役務の提供を受ける内国法人等がその株式を無償で取得することとなる事由(その株式の交付を受けた同項の個人が譲渡制限期間内の所定の期間勤務を継続しないこと若しくは当該個人の勤務実績が良好でないことその他の当該個人の勤務の状況に基づく事由又はこれらの法人の業績があらかじめ定めた基準に達しないことその他のこれらの法人の業績その他の指標の状況に基づく事由に限る。)が定められていること

特定譲渡制限付株式とは譲渡制限付株式であって次に掲げる要件に該当するものをいう。

  • 当該譲渡制限付株式が役務の提供の対価として個人に生ずる債権の給付と引換えに当該個人に交付されるものであること。
  • 当該譲渡制限付株式が実質的に当該役務の提供の対価と認められるものであること。

2.特定譲渡制限付株式に係る株式報酬の損金算入時期

特定譲渡制限付株式に係る報酬はその対象となる個人において給与等課税額が生ずることが確定した日の属する事業年度の損金の額に算入される(法法54条1項)。給与等課税額とは当該個人において譲渡制限付株式報酬につき給与所得等の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額をいう(法法54条1項)。簡単にいえば譲渡制限付株式報酬はその報酬を受け取る個人において所得税が課税される日の属する事業年度の損金の額に算入される。譲渡制限付株式報酬を受け取る個人においては一般的に譲渡制限付株式報酬に係る株式の譲渡制限が解除されたときに課税されるため、譲渡制限が解除された事業年度の損金の額に算入される。

3.非特定譲渡制限付株式に係る株式報酬の損金算入時期

特定譲渡制限付株式に該当しない譲渡制限付株式に係る株式報酬の損金算入時期については特段の定めがない。そのため原則通り判断することになる。従って譲渡制限付株式報酬が販管費に該当するものであれば、債務が確定した事業年度の損金の額に算入する(法法22条3項2号)。ただ譲渡制限付株式報酬を受け取る個人において一般的に株式の譲渡制限が解除されたときに課税されるのは、譲渡制限が解除されたときに収入すべきことが確定したためであることを踏まえると、債務の確定も譲渡制限が解除されたときと考えるのが整合的であると考える。