国外居住親族に係る扶養控除等を受けるための送金関係書類としてAlipayやWeChatPayの送金の明細が利用できるのか?

AliPayやWeChatPayによる送金の明細は送金関係書類として利用できないと考える。国外居住親族につき扶養控除等を受けようとする場合、送金関係書類が必要となる。送金関係書類は大きく以下の三つに分けられる。

  • ①金融機関の書類又はその写しで、当該金融機関が行う為替取引によって当該居住者から当該国外居住扶養親族等に支払をしたことを明らかにするもの
  • ②クレジットカード等購入あっせん業者の書類又はその写しで、クレジットカード等を当該国外居住扶養親族等が提示し又は通知して、特定の販売業者から商品若しくは権利を購入し、又は特定の役務提供事業者から有償で役務の提供を受けたことにより支払うこととなる当該商品若しくは権利の代金又は当該役務の対価に相当する額の金銭を当該居住者から受領し、又は受領することとなることを明らかにするもの
  • ③電子決済手段等取引業者の書類又はその写しで、当該電子決済手段等取引業者が当該居住者の依頼に基づいて行う電子決済手段の移転によって当該居住者から当該国外居住扶養親族等に支払をしたことを明らかにするもの(みなし電子決済手段等取引業者の書類又はその写しにあっては、当該みなし電子決済手段等取引業者が発行する電子決済手段に係るものに限られる。)

AliPayやWeChatPayによる送金の明細は上記のいずれにも該当しないと考える。

まずAliPayやWeChatPayの運営事業者は上記①の金融機関には該当しないと考えられる。上記①の金融機関とは内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律第2条第3号に規定する金融機関をいう(所規47条の2第8項1号)。具体的には以下のものが上記①の金融機関に該当する(国外送金法2条3号、国外送金令2条)。

  • 銀行
  • 長期信用銀行
  • 信用金庫
  • 信用金庫連合会
  • 労働金庫
  • 労働金庫連合会
  • 信用協同組合
  • 中小企業等協同組合法第9条の9第1項第1号の事業を行う協同組合連合会
  • 業として貯金の受入れをすることができる農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会
  • 日本銀行
  • 農林中央金庫
  • 株式会社商工組合中央金庫
  • 株式会社日本政策投資銀行
  • 株式会社国際協力銀行
  • 資金決済に関する法律第2条第3項に規定する資金移動業者

AliPayの運営事業者はアリババ、WeChatPayの運営事業者はテセントである。資金移動業者に該当しそうであるが、資金決済に関する法律第2条第3項に規定する資金移動業者とは、資金移動業を営むために内閣総理大臣の登録を受けた者である。資金移動業者は金融庁のホームページで公開されているが、アリババ・テセントは登録されていない。アリババ・テセントが日本で資金移動業を営む場合、おそらく子会社を作りその子会社が登録をするものと思われるが、それらしい子会社もない。従って資金移動業者にも該当しないものと考えられる。

またAliPayやWeChatPayによる送金は上記②にも該当しない。国外居住親族が支払時に居住者のアカウントのAliPayやWeChatPayによるQRコード決済を行えば、該当する余地はあると思われるが、送金は明らかに該当しない。

上記③の電子決済手段等取引業者は、資金決済に関する法律第2条第12項で定義される電子決済手段等取引業者をいう(所規47条の2第6項3号(かっこ書きにより8項3号にも適用される))。この電子決済手段等取引業者も電子決済手段等取引業を行うために内閣総理大臣の登録を受けた者である。こちらも金融庁のホームページで公開されいる。執筆時現在登録されている事業者はSBI VCトレード株式会社のみであり、AliPayやWeChatPayは明らかに該当しない。みなし電子決済手段等取引業者とは銀行等又は資金移動業者をいうため、こちらにも該当しない

以上のようにAliPayやWeChatPayによる送金の明細は上記①から③のいずれにも該当せず、送金関係書類・38万円送金書類として利用できないと考える。

一方PayPalやWiseは資金移動業者として登録されているようなので、その送金明細は上記①として送金関係書類・38万円送金書類として利用できると考える。