税務上定率法で償却する資産を会計上定額法で減価償却している場合の減価償却

税務上定率法で償却すべき減価償却資産を会計上定額法で減価償却している場合、一定期間後に税務調整が必要となる。

取得価額10,000,000円、耐用年数10年の減価償却資産を会計上は定額法、税務上は定率法で減価償却する場合を税務上の減価償却は以下のようになる。

会計税務
償却限度額の算出償却額期末未償却残高償却超過額累計額
償却費期末簿価調整前償却額改定後の償却額償却限度額
1年目1,000,0009,000,0002,000,0002,000,0001,000,0009,000,0000
2年目1,000,0008,000,0001,800,0001,800,0001,000,0008,000,0000
3年目1,000,0007,000,0001,600,0001,600,0001,000,0007,000,0000
4年目1,000,0006,000,0001,400,0001,400,0001,000,0006,000,0000
5年目1,000,0005,000,0001,200,0001,200,0001,000,0005,000,0000
6年目1,000,0004,000,0001,000,0001,000,0001,000,0004,000,0000
7年目1,000,0003,000,000800,000800,000800,0003,200,000200,000
8年目1,000,0002,000,000640,000800,000800,000800,0002,400,000400,000
9年目1,000,0001,000,000480,000800,000800,000800,0001,600,000600,000
10年目999,9991320,000800,000800,000800,000800,000799,999
11年目01160,000799,999799,999799,99910

会計上は定額法で償却するため、10年目を除けば償却費は毎年1,000,000である。

税務では定率法で償却するため、調整前償却額が償却保証額を上回っている間は未償却残高に償却率を乗じて償却限度額を計算する。ここでいう未償却残高とは減価償却資産の取得価額から既にした償却の額で各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された金額を控除した残高をいう(法令48条の2第1項1号イ(2)かっこ書き参照)。1年目の会計上の償却額は1,000,000、償却限度額は2,000,000であるため、1年目は償却費として1,000,000、損金の額に算入される。従って2年目の減価償却前の未償却残高は9,000,000であり、償却限度額は1,800,000である。会計上の償却額の方が小さいので、償却費として損金の額に算入される金額は2年目も1,000,000である。6年目までは同様の状態が続く。

7年目は償却限度額が800,000となり、会計上の償却額を下回るため、償却超過額が発生する。

8年目は調整前償却額が償却保証額を下回るため、償却限度額の計算が改定される。改定取得価額は7年目の未償却残高の3,200,000であるため、改定後の償却限度額は800,000である。会計上の償却額が償却限度額を超えているため、償却超過額が生じる。同様の状態が10年目まで続き、10年目でも税務上は未償却残高が800,000残る。

11年目は会計上の償却費は0である。しかし過年度の償却超過額は損金経理した金額に含まれる(法法31条4項)。そのため800,000損金経理したとされ、償却限度額799,999円まで償却費として11年目に損金の額に算入される。