自己株式売却の会計と税務

1.会計

自己株式を売却した場合、貸借対照表に表示されている自己株式の額から売却した自己株式の帳簿価額を控除する(会社計算規則24条2項)。

自己株式売却の対価が売却した自己株式の帳簿価額を超える場合、その他資本剰余金の額にその超える部分の金額を加算する(会社計算規則27条1項3号)。逆に自己株式売却の対価が売却した自己株式の帳簿価額に満たない場合、その他資本剰余金の額からその満たない部分の金額を控除する(会社計算規則27条2項3号)。

2.税務

(1)法人税

自己株式を売却した場合、資本金等の額にその売却代金の金額を加算する(法令8条1項1号)。

自己株式であっても株式である以上、有価証券である。有価証券を売却した場合、通常譲渡損益はその事業年度の損金の額又は益金の額に算入する(法法61条の2第1項)。しかし法人税では有価証券から自己株式が除外されている(法法2条21号)。そのため譲渡損益が生じたとしても損金の額又は益金の額に算入されない。その代わり売却代金の金額だけ資本金等の額が増加することとなる。

(2)消費税

有価証券の譲渡は消費税の非課税取引である(消法別表第二2号)。自己株式であっても株式である以上、有価証券である。また法人税と異なり、有価証券から自己株式は除外されていない(消令9条参照)。しかし資産の譲渡とは、資産につきその同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいう(消基通5-2-1)。株式には議決権や利益配当請求権等が認められているが、自己株式にそれらの権利が認められていない。自己株式を売却すると議決権等が復活する。そのため同一性を保持しているとはいえず、自己株式の売却は消費税の課税対象である資産の譲渡に該当しないこととなる(消基通5-2-9、消費税法基本通達逐条解説令和6年版P.208)。

3.具体例

(1)前提

  • 資本金の額は5,000,0000円、その他資本剰余金は5,000,000円とする。
  • 過去自己株式を5,000,0000円取得しており、その際の取得資本金額は2,000,000円であったとする。そのため資本金等の額は8,000,000円となっており、また利益積立金額から3,000,000円控除されているものとする。
  • 自己株式すべてを6,000,000円で売却するものとする。

(2)会計

仕訳は以下のようになる。

借方貸方
現金6,000,000自己株式5,000,000
その他資本剰余金の額(自己株式処分差益)1,000,000

(3)税務

仕訳は以下のようになる。

借方貸方
現金6,000,000資本金等の額6,000,000

貸借対照表から自己株式はなくなるため、別表五(一)の利益積立金額の部分の記載は例えば以下のようにする。

区分期首現在利益積立金額当期の増減差引翌期首現在利益積立金額
自己株式△3,000,000△3,000,0000
資本金等の額0△3,000,000△3,000,000

そして次のように資本金等の部分の記載をすると利益積立金額と整合的になる。

区分期首現在資本金等の額当期の増減差引翌期首現在資本金等の額
資本金又は出資金5,000,0005,000,000
資本準備金
その他資本剰余金5,000,0001,000,0006,000,000
自己株式△2,000,000△2,000,0000
利益積立金額3,000,0003,000,000
差引合計額8,000,000△2,000,0004,000,00014,000,000