1.基本的な内容
内国法人と支配関係法人との間で当該内国法人を合併法人等とする特定適格組織再編成等が行われた場合において、5年超の支配関係等がないときは、当該内国法人の対象期間において生ずる特定資産譲渡等損失額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない(法法62条の7第1項)。
2.適用要件
(1)要件の整理
- ① 特定組織再編成等が行われたこと
- ② 当該組織再編成等が支配関係法人との間で行われたこと
- ③ 5年超の支配関係等がないこと
- ④ 対象期間において特定資産譲渡等損失額が生じたこと
(2)対象となる組織再編成等
以下の組織再編成等で、共同事業要件を満たさないものを特定組織再編成等という(法法62条の7第1項)。
- 適格合併
- 非適格合併で譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延の適用を受けたもの
- 適格分割
- 適格現物出資
- 適格現物分配
①から④までの要件又は①及び⑤の要件を満たす場合、共同事業要件を満たし対象となる特定適格組織再編成等から除外される(法法62条の7第1項、法令112条10項、3項)。適格現物分配は共同事業要件を満たさない(同項かっこ書き)。適格組織再編成等を行った場合の欠損金の使用制限の規定を参照しているため、適格組織再編成等を行った場合の欠損金の使用制限における共同事業要件と同様の要件となる。
- ① 適格合併等に係る被合併法人等の被合併事業等と当該適格合併に係る合併法人等の合併事業等とが相互に関連するものであること。
- ② 被合併事業等と当該被合併事業等と関連する合併事業等のそれぞれの売上金額、当該被合併事業等と当該合併事業等のそれぞれの従業者の数、適格合併等に係る被合併法人等と合併法人等のそれぞれの資本金の額若しくは出資金の額又はこれらに準ずるものの規模(適格分割又は適格現物出資にあっては、被合併事業等と合併事業等のそれぞれの売上金額、当該被合併事業等と当該合併事業等のそれぞれの従業者の数又はこれらに準ずるものの規模)の割合がおおむね5倍を超えないこと。
- ③ 被合併事業等が被合併法人支配関係発生時から当該適格合併の直前の時まで継続して行われており、かつ、当該被合併法人支配関係発生時と当該適格合併の直前の時における当該被合併事業の規模(②に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね2倍を超えないこと
- 被合併法人支配関係発生時とは原則として当該適格合併等に係る被合併法人等が合併法人等との間に最後に支配関係を有することとなった時をいう。ただし当該被合併法人等がその時から当該適格合併等の直前の時までの間に当該被合併法人等を合併法人等とする適格合併等により被合併事業等の全部又は一部の移転を受けている場合には、当該適格合併等の時をいう。
- ④ 合併事業等が合併法人支配関係発生時から当該適格合併等の直前の時まで継続して行われており、かつ、当該合併法人支配関係発生時と当該被合併事業等と関連する当該適格合併等の直前の時における当該合併事業等の規模(②に規定する規模の割合の計算の基礎とした指標に係るものに限る。)の割合がおおむね2倍を超えないこと
- 合併法人支配関係発生時とは原則として当該適格合併等に係る合併法人等が被合併法人等との間に最後に支配関係を有することとなった時をいう。ただし当該合併法人等がその時から当該適格合併等の直前の時までの間に当該合併法人を合併法人等とする適格合併等により合併事業の全部又は一部の移転を受けている場合には、当該適格合併等の時をいう。
- ⑤ 「適格合併等に係る被合併法人等の当該適格合併等の前における特定役員等である者のいずれかの者で、当該被合併法人等が当該適格合併等に係る合併法人等との間に最後に支配関係を有することとなった日前(当該支配関係が当該被合併法人となる法人又は当該合併法人となる法人の設立により生じたものである場合には、同日)において当該被合併法人等の役員又は当該これらに準ずる者でかつ同日において当該被合併法人の経営に従事していた者」と「当該合併法人の当該適格合併の前における特定役員である者のいずれかの者で、当該最後に支配関係を有することとなった日前において当該合併法人の役員又は当該これらに準ずる者で、かつ同日において当該合併法人の経営に従事していた者とが当該適格合併等の後に当該合併法人等(当該適格合併等が法人を設立するものである場合には、当該適格合併等により設立された法人)の特定役員となることが見込まれていること
- 特定役員とは社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役若しくは常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。
- 特定役員等とは合併にあっては特定役員をいい、適格分割又は適格現物出資にあっては役員又は当該これらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。
ここでは以下のものを適格合併等という。
- 適格合併
- 非適格合併で譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延の適用を受けたもの
- 適格分割
- 適格現物出資
以下のものを被合併法人等という。
- 被合併法人
- 分割法人
- 現物出資法人
以下のものを被合併事業等という。
- 被合併法人の当該適格合併の前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業
- 分割事業
- 現物出資事業
以下のものを合併法人等という。
- 当該合併法人、分割承継法人又は被現物出資法人が当該適格合併により設立された法人である場合にあっては、当該適格合併等に係る他の被合併法人等
- 上記以外は以下の法人
- 合併法人
- 分割承継法人
- 被現物出資法人
以下のものを合併事業等という。
- 当該合併法人等の当該適格合併等の前に行う事業のうちのいずれかの事業
- 当該合併法人等が当該適格合併等により設立された法人である場合にあっては、当該適格合併等に係る他の被合併法人等の被合併事業等のうちのいずれかの事業
(3)支配関係法人
支配関係法人とは当該内国法人との間に支配関係がある法人をいう(法法62条の7第1項)。
(4)5年超の支配関係等
次に掲げる場合のいずれかに該当する場合、5年超の支配関係等があるものとされる(法令123条の8第1項)。
- 合併法人等となる内国法人と被合併法人等となる支配関係法人との間に特定組織再編成事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係がある場合
- 合併法人等となる内国法人又は被合併法人等となる支配関係法人が特定組織再編成事業年度開始の日の5年前の日後に設立された法人である場合(次に掲げる場合を除く。)であって当該内国法人と当該支配関係法人との間に当該内国法人の設立の日又は当該支配関係法人の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき
- 当該内国法人との間に支配関係がある他の法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする適格組織再編成等で、当該支配関係法人を設立するもの又は当該内国法人が当該他の法人との間に最後に支配関係を有することとなった日以後に設立された当該支配関係法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人とするものが行われていた場合(同日が特定組織再編成事業年度開始の日の5年前の日以前である場合を除く。)
- 当該支配関係法人との間に支配関係がある他の法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする適格組織再編成等で、当該内国法人を設立するもの又は当該支配関係法人が当該他の法人との間に最後に支配関係を有することとなった日以後に設立された当該内国法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人若しくは被現物分配法人とするものが行われていた場合(同日が特定組織再編成事業年度開始の日の5年前の日以前である場合を除く。)
(5)対象期間
特定の組織再編成等が行われた場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入の規定の対象となる組織再編成等のうち、共同事業要件を満たさないものを特定適格組織再編成等という(法法62条の7第1項)。
対象期間は原則として特定組織再編成事業年度開始の日から同日以後3年を経過する日又は当該内国法人が当該支配関係法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日以後5年を経過する日のいずれか早い日までの期間をいう。ただし以下の規定の適用を受ける場合、その適用を受ける事業年度終了の日までの期間となる。
- 非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益
- 通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益
- 通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益
- 通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益(第1号に係る部分に限る。)
3.特定資産譲渡等損失額
特定資産譲渡等損失額とは、次に掲げる金額の合計額をいう(法法62条の7第2項)。
- ① 特定引継資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額から特定引継資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額を控除した金額
- 特定引継資産とは、合併法人等となる内国法人が被合併法人等となる支配関係法人から特定適格組織再編成等により移転を受けた資産のうち棚卸資産、当該特定適格組織再編成等の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるもの以外の資産で、支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもの及びこれに準ずるものとして政令で定めるものをいう。
- 支配関係発生日とは該支配関係法人が当該内国法人との間に最後に支配関係を有することとなった日をいう。
- 特定引継資産とは、合併法人等となる内国法人が被合併法人等となる支配関係法人から特定適格組織再編成等により移転を受けた資産のうち棚卸資産、当該特定適格組織再編成等の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるもの以外の資産で、支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもの及びこれに準ずるものとして政令で定めるものをいう。
- ② 特定保有資産の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額から特定保有資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額を控除した金額
- 合併法人等となる内国法人が有する資産のうち棚卸資産、特定適格組織再編成等の日の属する事業年度開始の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるもの以外の資産で、支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもの及びこれに準ずるものとして政令で定めるものをいう。
4.欠損等法人に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定との適用関係
(1)被合併法人等となる支配関係法人が欠損等法人である場合
被合併法人等となる支配関係法人が特定適格組織再編成等の直前において欠損等法人であり、かつ、当該特定適格組織再編成等が欠損等法人に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定における適用期間内に行われるものであるときは、合併法人等となる内国法人が当該支配関係法人から当該特定適格組織再編成等により移転を受けた資産については、特定組織再編成等が行われた場合の特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定は適用されない(法法62条の7第4項)。
(2)合併法人等となる内国法人が欠損等法人である場合等
合併法人等となる内国法人が欠損等法人であり、かつ、特定適格組織再編成等が欠損等法人に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定における適用期間内に行われるものであるときは、当該内国法人が有する資産については、特定組織再編成等が行われた場合の特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定は適用されない(法法62条の7第5項)。
合併法人等となる内国法人が特定適格組織再編成等後に欠損等法人となり、かつ、欠損等法人に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定における適用期間が開始したときは、対象期間が当該適用期間開始の日の前日に終了するため、その後は特定組織再編成等が行われた場合の特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定は適用されない(法法62条の7第6項)。
5.グループ通算制度に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定との適用関係
合併法人等となる内国法人について特定適格組織再編成等後に通算承認の効力が生じ、かつ、グループ通算制度に係る特定資産譲渡等損失額の損金不算入の規定における適用期間が開始したときは、当該適用期間開始の日以後に開始する事業年度においては、当該特定適格組織再編成等に係る特定保有資産については特定組織再編成等が行われた場合の特定資産譲渡等損失額はないものとされる(法法62条の7第7項)。