1.分割法人の税務
(1)譲渡損益
内国法人が分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、その分割承継法人に移転をした資産及び負債の分割の時の価額による譲渡をしたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62条1項)。
(2)資本金等の額の減少
分割法人の分割型分割の直前の資本金等の額に移転純資産割合を乗じて計算した金額だけ資本金等の額が減少する(法令8条1項15号)。
移転純資産割合は次の計算式により計算する。
分割型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を控除した金額 ÷ 分割型分割の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額
(3)利益積立金額の減少
利益積立金額が「分割法人が分割型分割により分割法人の株主等に交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額から資本金等の額の減少額を減算した金額」だけ減少する(法令9条9号)。
2.分割法人の株主の税務
(1)みなし配当
法人の株主等がその法人の非適格分割型分割により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額がその法人の資本金等の額のうちその交付の基因となったその法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は、配当等とみなされる(法法24条1項2号)。
(2)分割法人株式の譲渡損益
内国法人が所有株式を発行した法人の行った分割型分割により分割承継法人の株式その他の資産の交付を受けた場合には、その所有株式のうち分割型分割により分割承継法人に移転した資産及び負債に対応する部分の譲渡を行ったものとみなされ、分割法人株式の譲渡損益を損金の額又は益金の額に算入する(法法62条の2第4項前段)。分割法人株式の譲渡損益の計算における譲渡対価の額は金銭等不交付分割型分割に該当するかどうかで異なる。金銭等不交付分割型分割に該当する場合、譲渡対価の額はその分割法人株式の分割純資産対応帳簿価額である(法法62条の2第4項後段)。金銭等不交付分割型分割に該当しない場合、取得した資産の時価である。分割法人株式の譲渡損益の計算における譲渡原価の額は金銭等不交付分割型分割に該当するか否かに関わらず、その分割法人株式の分割純資産対応帳簿価額である(法法62条の2第4項後段)。
(3)分割承継法人又は分割承継親法人の株式の取得価額
金銭等不交付分割型分割により分割承継法人又は分割承継親法人の株式を取得した場合、分割法人の株式の分割型分割の直前の帳簿価額に移転資産負債割合を乗じて計算した金額が取得価額となる(法令119条1項6号)。
金銭等不交付分割型分割に該当しない分割型分割により分割承継法人又は分割承継親法人の株式を取得した場合、取得時の時価が取得価額となる。
3.分割承継法人の税務
(1)移転資産負債の取得価額
時価で取得する。
(2)資産調整勘定等
非適格分割型分割の場合、原則として資産調整勘定等を認識する(法法62条の8)。別記事の「非適格合併等により移転を受ける資産等に係る資産調整勘定等の税務」参照。
(3)資本金等の額
分割で資本金が増加した場合、資本金の増加に伴い資本金等の額も増加する(法令8条1項)。
資本金等の額が「分割型分割により移転を受けた資産及び負債の純資産価額から分割型分割による増加資本金額等及び分割承継法人が有していた分割型分割に係る分割法人の株式に係る分割純資産対応帳簿価額を減算した金額」増加する(法令8条1項6号)。移転を受けた資産及び負債の純資産価額は次のいずれかの区分に応じそれぞれに定める金額である。
①適格分割型分割に該当しない分割型分割(②③に該当するものを除く) | 分割型分割により分割法人に交付した分割承継法人の株式その他の資産の価額の合計額 |
②適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち資産調整勘定等を認識する非適格合併等に該当しないもの(無対価分割に該当するものを除く。) | 移転資産の価額から移転負債の価額を減算した金額 |
③適格分割型分割に該当しない分割型分割のうち無対価分割で法人税法施行令4条の3第6項第2号イ(2)に掲げる関係があるもの | 移転資産の価額から移転負債の価額を控除した金額 |
増加資本金額等は次の金額の合計額である(法令8条1項6号かっこ書き)。
- 分割型分割により増加した資本金の額又は出資金の額
- 分割型分割により分割法人に交付した金銭の額
- 分割型分割により分割法人に交付した金銭及び分割承継法人の株式以外の資産の価額