利益積立金額と未払法人税等

1.概要

一番シンプルな法人税の申告は申告調整が未払法人税等のみの申告である。申告調整が未払法人税等のみであれば、利益積立金額の金額は会計上の繰越利益剰余金の金額に未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の金額を加算した金額となる。

2.考え方

利益積立金額は法人の所得の金額で留保している金額として政令で定める金額をいう(法法2条18号)。具体的には課税所得等の一定の項目を集計した金額である(法令9条)。申告調整が未払法人税等のみの場合、集計する項目は課税所得と未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税である。課税所得は利益積立金額に加算する(法令9条1項イ)。それに対して未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税は利益積立金額から控除する(法令9条1項カ)。利益積立金額は過去の事業年度を含むこれらの金額の合計である(法令9条1項)。

申告調整が未払法人税等のみの場合、利益積立金額の金額は会計上の繰越利益剰余金の金額に未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の金額を加算した金額となる。未払法人税等で計上する法人税等はすべて申告納税方式の税金であり、その対象となる事業年度の損金とならないため、課税所得に加算される。その結果利益積立金額にも加算される。しかし未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税は利益積立金額から控除されるので、最終的に利益積立金額に加算されるのは未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の合計額である。

期末において繰越利益剰余金と利益積立金額に差が生じるが、この差は未払法人税等を支払った時点でなくなる。未払法人税等は通常その計上をした事業年度の翌事業年度に申告納税される。申告納税されると損金に算入され、課税所得から控除(減算留保)される。しかし未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税は損金の額に算入できないため、最終的に課税所得から減額されるのは事業税と特別法人事業税の合計額である。納税のみであれば繰越利益剰余金は変動しない。一方課税所得はこの調整により事業税と特別法人事業税の合計額分マイナスとなる。そのためこの時点で利益積立金額を計算すると期首の利益積立金額から事業税と特別法人事業税の合計額を控除することとなる。期首時点では利益積立金額の方が繰越利益剰余金よりも未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の合計額だけ大きいため、未払法人税等の申告納税により、利益積立金額と繰越利益剰余金が一致する。そして期末において未払法人税等を計上すると未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の合計額だけ利益積立金額が繰越利益剰余金よりも大きくなる。

3.具体例

(1)前提

会計は以下の通りとする。

第一期第二期
税引前当期純利益10,000,00012,000,000
法人税△ 1,664,000△ 2,128,000
地方法人税△ 171,400△ 219,200
住民税△ 186,500△ 219,000
事業税△ 458,000△ 564,000
特別法人事業税△ 169,500△ 208,700
税引後当期純利益7,350,6008,661,100
繰越利益剰余金7,350,60016,011,700

(2)第一期の利益積立金額の計算

第一期のためこの期の課税所得から未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税を控除した金額が利益積立金額となる。未払法人税等は前述の通り第一期の損金にならないため、課税所得は税引後当期純利益に未払法人税等を加算した10,000,000となる。未払法人税等のうち法人税・地方法人税・住民税は2,021,900円であるため、利益積立金額は7,978,100円となる。この金額は繰越利益剰余金に未払法人税等のうち事業税と特別法人事業税の合計額627,500円を加算した金額となっている。

(3)第二期の利益積立金額の計算

第二期では第一期で計上した未払法人税等が申告納税される。そうすると第一期の未払法人税等の金額2,649,400円が課税所得から控除される。一方法人税・地方法人税・住民税は損金に算入できないため加算される。また第二期の未払法人税等として3,338,900円計上されるため、第一期と同様にこちらも課税所得に加算される。これらの結果、課税所得は11,372,500円となる。前期の利益積立金額に第二期の課税所得を加算した16,784,400円が第二期の利益積立金額となる。

(4)計算例まとめ

第一期、第二期の課税所得の計算をまとめると以下のようになる。

第一期第二期
税引後当期純利益7,350,6008,661,100
前期未払法人税等△ 2,649,400
法人税等の損金不算入2,021,900
当期未払法人税等2,649,4003,338,900
課税所得10,000,00011,372,500

また利益積立金額の計算は以下のようになる。

第一期第二期
課税所得10,000,00011,372,500
法人税△ 1,664,000△ 2,128,000
地方法人税△ 171,400△ 219,200
住民税△ 186,500△ 219,000
小計7,978,1008,806,300
利益積立金額7,978,10016,784,400
繰越利益剰余金との差627,500772,700