個人が現物出資を行う場合の税務

1.概要

個人が現物出資した場合、出資した個人の側では現物出資した資産を譲渡したものとして譲渡所得として課税される。出資される法人側では必ず非適格現物出資に該当する。そのため現物出資財産は時価で取得したものとして処理する。また場合によっては資産調整勘定等を認識する。差額は資本金等の額となる。

2.現物出資をした個人の税務

(1)譲渡所得課税

個人が現物出資によりその有する資産を法人に譲渡した場合、譲渡所得の対象となる。譲渡所得は譲渡対価の額から取得費及び譲渡費用の額の合計額を控除した金額である(所法33条3項)。

譲渡対価の額は原則として現物出資により取得した被現物出資法人の株式等の時価である。ただし低額譲渡に該当する場合、現物出資した資産の時価が譲渡対価の額となる(所法59条1項2号)。現物出資において低額譲渡とは、「現物出資により取得した被現物出資法人の株式等の時価」が「現物出資した財産の時価」の2分の1に満たない場合をいう(所令169条)。また被現物出資法人の株式等の時価は現物出資後の時価であると考える。

3.現物出資を受けた法人の税務

(1)非適格現物出資

適格現物出資は法人が現物出資をする場合に限られるため、個人が現物出資をする場合必ず非適格現物出資となる(法法2条1項12号の14参照)。

(2)移転を受けた資産負債の取得価額

時価で取得する。

(3)資産調整勘定等の認識

現物出資も資産調整勘定等を認識する事由であるため、資産の譲渡等に類似する現物出資でない限り、資産調整勘定等を認識する(法法62条の8第1項、法令123条の10第1項)。個人が単に不動産や株式を現物出資する場合、通常資産調整勘定等を認識する現物出資に該当しないことが多いと思われる。資産調整勘定等の詳細に関しては「非適格合併等により移転を受ける資産等に係る資産調整勘定等の税務」を参照。

(4)資本金等の額

①会社法上の資本金の増加に伴う資本金等の額の増加

出資を受け株式を発行するため、資本金が増加する。それに伴い資本金等の額も同額増加する(法令8条1項本文)。

②会社法上の資本金の増加によらない資本金の増加

以下の通り資産調整勘定等を認識するものかどうかにより異なる。

資本金等の額の増加額
資産調整勘定等を認識しない場合現物出資法人に交付した被現物出資法人の株式の非適格現物出資の時の価額から非適格現物出資により増加した資本金の額又は出資金の額を減算した金額(法令8条1項9号)
資産調整勘定等を認識する場合給付を受けた金銭以外の資産の価額からその発行により増加した資本金の額又は出資金の額を減算した金額(法令8条1項1号ホ)。