1.4つの適用除外要件
次に掲げる要件のいずれかに該当するときは子会社株式簿価減額特例は適用されない(法令119条の3第10項)。
- 内国株主割合要件
- 特定支配日利益剰余金額要件
- 10年超支配要件
- 金額要件
2.内国株主割合要件
当該他の法人の設立の時から特定支配日までの期間を通じて、当該他の法人の発行済株式又は出資(当該他の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに占める外国法人以外の普通法人若しくは協同組合等又は居住者が有する当該他の法人の株式又は出資の数又は金額の割合が90%以上であるときは、子会社株式簿価減額特例は適用されない(法令119条の3第10項1号)。発行済株式又は出資からは当該他の法人が有する自己の株式又は出資は除外される。
ただし当該他の法人が普通法人であり、かつ、外国法人に該当しなければこの適用除外の適用を受けることができない(法令119条の3第10項1号かっこ書き)。
また当該期間を通じて当該割合が90%以上であることを証する書類を当該内国法人が保存していなければならない(法令119条の3第10項1号かっこ書き)。この書類は設立の時の株主の状況及び当該設立の時から特定支配日までの株主の異動の状況が確認できる書類のそれぞれをいう(法基通2-3-22の5)。例えばこれらの状況が確認できる商業登記簿謄本、株主名簿の写し、株式譲渡契約書又は有価証券台帳等がこれに該当する(法基通2-3-22の5)。
3.特定支配日利益剰余金額要件
(1)要件の内容
特定支配日が当該対象配当等の額を受ける日の属する当該他の法人の事業年度開始の日前である場合において、次のイに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額がハに掲げる金額以上であるときは、子会社株式簿価減額特例は適用されない(法令119条の3第10項2号)。
- イ 当該他の法人の当該対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額
- ロ イに規定する事業年度終了の日の翌日から当該対象配当等の額を受ける時までの間に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額の合計額
- ハ 当該他の法人の特定支配日前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額
自ら設立した法人は通常設立時の利益剰余金が0円である。従って設立後獲得した利益剰余金を配当する限り、通常この適用除外が適用され子会社株式簿価減額特例は適用されない。
(2)当該他の法人の当該対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額
利益剰余金期中増加及び期中配当等があった場合、当該直前の当該他の法人の利益剰余金の額から当該貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額と当該対象期間内に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額とを合計した金額を加算する(法令119条の3第10項2号イかっこ書き)。利益剰余金期中増加及び期中配当等があった場合とは、対象期間内に当該他の法人の利益剰余金の額が増加した場合において、当該他の法人の当該対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度の終了の日の翌日から当該対象配当等の額を受ける時までの期間内に当該他の法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが当該翌日以後である場合をいう。ここでいう対象期間とは当該他の法人の当該対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度終了の日の翌日から当該対象配当等の額を受ける直前の時までの期間をいう。
この調整計算は当該対象配当等の額を受ける直前の当該他の法人の利益剰余金の額から当該貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額及び次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を証する書類を当該内国法人が保存している場合に限り適用される(法令119条の3第10項2号かっこ書き)。この書類については当該他の法人の当該最後に終了した事業年度の貸借対照表の写しのほか、例えば、当該他の法人の対象期間における利益の額を計算した書類の写しがこれに該当する(法基通2-3-22の6)。対象期間における利益の額を一定の期間に分割して計算している場合には、各月の月次決算書等のその分割した各期間に係る利益又は損失の額を計算した書類の写しがこれに該当する(法基通2-3-22の6)。当該他の法人が当該対象期間において利益剰余金の処分を行っている場合には、当該写しのほか、損益金の処分表等のその処分の内容が明らかとなる書類の写しも必要となる(法基通2-3-22の6)。
当該他の法人の当該特定支配日の属する事業年度開始の日から当該特定支配日の前日までの期間内に当該他の法人の利益剰余金の額が増加した場合において、当該開始の日以後に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが当該期間内であったとき | 当該特定支配日の前日の当該他の法人の利益剰余金の額から当該他の法人の当該特定支配日前に最後に終了した事業年度(当該特定支配日の属する事業年度が当該他の法人の設立の日の属する事業年度である場合には、その設立の時)の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額 |
当該他の法人が法人税法施行令119条の3第14項第1号に掲げる法人に該当することにより当該内国法人が同号の規定の適用を受ける場合で、かつ、当該内国法人が同号の関係法人との間に最後に特定支配関係を有することとなった日の属する当該関係法人の事業年度開始の日から当該最後に特定支配関係を有することとなった日の前日までの期間内に当該関係法人の利益剰余金の額が増加した場合において、当該開始の日以後に当該関係法人の株主等が当該関係法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが当該期間内であったとき | 当該最後に特定支配関係を有することとなった日の前日の当該関係法人の利益剰余金の額から当該最後に特定支配関係を有することとなった日前に最後に終了した当該関係法人の事業年度(同日の属する事業年度が当該関係法人の設立の日の属する事業年度である場合には、その設立の時)の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額 |
(3)当該他の法人の特定支配日前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額
利益剰余金期中増加及び期中配当等があり、かつ、配当等を支払う当該他の法人の当該特定支配日の属する事業年度開始の日から当該特定支配日の前日までの期間内に当該他の法人の利益剰余金の額が増加した場合において、当該開始の日以後に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかが当該期間内であったときは、次に掲げる金額の合計額から特定支配前配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額を減算した金額を加算する。
- 当該特定支配日の前日の当該他の法人の利益剰余金の額から当該他の法人の当該特定支配日前に最後に終了した事業年度(当該特定支配日の属する事業年度が当該他の法人の設立の日の属する事業年度である場合には、その設立の時)の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額
- 当該他の法人の当該特定支配日の属する事業年度開始の日から当該特定支配日の前日までの期間内に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額
上記に該当せず、かつ、特定支配前配当等の額がある場合、当該特定支配前配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額を減算する。特定支配前配当等の額とは、当該他の法人の当該特定支配日の属する事業年度開始の日以後に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受けた配当等の額で、当該配当等の額に係る基準時が当該特定支配日前であるものをいう。
また当該特定支配日の属する事業年度が当該他の法人の設立の日の属する事業年度である場合には、その設立の時の貸借対照表に計上されている利益剰余金が基準となる。
(4)書類の保存
特定支配日利益剰余金額要件は上記イに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額がハに掲げる金額以上であることを証する書類を当該内国法人が保存していなければ適用を受けることができない(法令119条の3第10項2号かっこ書き)。
4.10年超支配要件
特定支配日から対象配当等の額を受ける日までの期間が10年を超えるときは、子会社株式簿価減額特例は適用されない(法令119条の3第10項3号)。
5.金額要件
対象配当等の額及び同一事業年度内配当等の額の合計額が2,000万円を超えないときは、子会社株式簿価減額特例は適用されない(法令119条の3第10項4号)。