分割型分割と分社型分割の法人税法上の定義と分割承継法人による判断

1.分割型分割と分社型分割の法人税法上の定義

分割承継法人から分割法人へ分割の対価が交付されるか否かにより、分割型分割・分社型分割の定義が異なる。分割承継法人から分割法人へ対価が交付されない分割を特に無対価分割という(法法2条12号の9ロ)。

(1)分割の対価がある場合の定義

分割承継法人から分割法人へ分割の対価が交付される場合、分割型分割とは以下のものをいう(法法2条12号の9イ)。

  • 分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産の全てが当該分割の日において当該分割法人の株主等に交付される分割
  • 分割により分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割

それに対し分社型分割とは分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産が当該分割の日において当該分割法人の株主等に交付されない分割をいう(法法2条12号の10イ)。

(2)無対価分割の場合の定義

無対価分割の場合の分割型分割と分社型分割の定義等については別記事の「無対価分割の場合の分割型分割と分社型分割の法人税法上の定義と区分」参照。ここでは定義のみ記載する。

無対価分割の場合、分割型分割とは以下のものをいう(法法2条12号の9ロ)。

  • その分割の直前において、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している分割
  • その分割の直前において、分割法人が分割承継法人の株式を保有していない分割

それに対し分社型分割とはその分割の直前において、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有しておらず、かつ、分割法人が分割承継法人の株式を保有している分割をいう(法法2条12号の10ロ)。

2.分割承継法人による分割型分割・分社型分割の判断

(1)細かい話

分割の対価の交付がある場合、分割型分割は対価が最終的に分割法人の株主等に交付される分割である。会社法上は分社型分割しか認められていない。分社型分割を行い、剰余金の配当等を行うことで実質的に分割型分割を行うことができる。そのため上記のような定義になっているのだと思われる。しかしグループ会社内の分割でない場合、分割の対価が分割の日において分割法人の株主等に交付されるか分割承継法人が把握できるのだろうか?言い換えれば分割承継法人は分割型分割か分社型分割か判断できるのか疑問がある。分割承継法人が分割法人に質問すればいいだけのように思われるが、回答が正しいか分割承継法人は検証できない。

次で検討するように分割型分割・分社型分割であっても分割承継法人における処理には影響がないと思われる。ただし申告書に添付する「組織再編成に係る主要な事項に関する明細書」と異動届には分割型分割・分社型分割か否かチェックする欄がある。

(2)分割承継法人における非適格分割型分割・非適格分社型分割の比較

①適格分割か否かの判断

グループ会社内の分割でないので、対価は金銭等であるものとする。対価が金銭等であるため、分割型分割・分社型分割いずれに該当しても非適格分割となる。

②資産等の取得価額

非適格分割に該当するため、分割により取得した資産等の取得価額は分割型分割・分社型分割いずれに該当しても取得時の時価である。

③資産調整勘定等

非適格分割に該当するため、分割型分割・分社型分割いずれに該当しても、要件を満たせば資産調整勘定等が生じる。資産調整勘定等の金額の計算も変わらない。

④資本金等の額

条文自体は異なるものの非適格分割に該当する場合に関しては、分割型分割・分社型分割いずれに該当しても変動額は一致するものと考える。