Ⅰ.枠組み
株式移転とは一又は二以上の法人がその発行済株式の全部を新たに設立する法人に取得させることをいう。
税務上株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得した当該株式移転により設立された法人を株式移転完全親法人、株式移転によりその株主の有する株式を当該株式移転により設立された法人に取得させた当該株式を発行した法人を株式移転完全子法人という(法法2条12号の6の6、12号の6の5)。
株式移転により移転するリソースは株式移転完全子法人の株式である。このリソースを取得するのは株式移転完全親法人であり、リソースを譲渡するのは株式移転完全子法人の株主である。
Ⅱ.リソースの取得者の税務(株式移転完全親法人の税務)
1.取得したリソースに関する論点
(1)移転を受けた株式移転完全子法人の株式の取得価額
株式移転完全子法人の株式を取得する。その取得価額は次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされる(法令119条1項12号)。
- 当該適格株式移転の直前において株主の数が50人未満である株式移転完全子法人の株式の取得をした場合、当該株式移転完全子法人の株主が有していた当該株式移転完全子法人の株式の当該適格株式移転の直前の帳簿価額に相当する金額の合計額に取得費用の額を加算した金額
- 当該株主が個人である場合には当該個人が有していた当該株式移転完全子法人の株式の当該適格株式移転の直前の取得価額
- 当該適格株式移転の直前において株主の数が50人以上である株式移転完全子法人の株式の取得をした場合、当該株式移転完全子法人の当該適格株式移転の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額に相当する金額に取得費用を加算した金額
- 当該適格株式移転の日以前6月以内に中間申告期間について仮決算による中間申告書を提出し、かつ、その提出の日から当該適格株式移転の日までの間に確定申告書を提出していなかった場合には、当該中間申告書に係る中間申告期間終了の時における資産の帳簿価額等により計算する。
- 当該終了の時から当該適格株式移転の直前の時までの間に資本金等の額又は利益積立金額(法人税法施行令第9条第1号及び第6号に掲げる金額を除く。)が増加し、又は減少した場合には、その増加した金額を加算し、又はその減少した金額を減算する。
その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額である(法令119条1項27号)。
(2)適格組織再編等の場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
適用はない。
(3)繰越欠損金の使用制限
適用はない。
2.取得したリソースの取得価額と移転対価の金額との差額(資産調整勘定等)
資産調整勘定等は生じない。
3.リソースの移転対価に関する論点
(1)移転対価として株式移転完全親法人の株式を発行した場合
株式の発行により資本金が増加するため、資本金等の額も増加する(法令8条1項柱書)。
(2)株式の発行によらない資本金等の額の増加額
資本金等の額に株式移転により移転を受けた株式移転完全子法人の株式の取得価額から以下の金額を控除した金額が加算される(法令8条1項11号)。
- 当該株式移転の時の資本金の額
- 当該株式移転により当該株式移転に係る株式移転完全子法人の株主に交付した当該法人の株式以外の資産の価額
- 当該株式移転完全子法人の当該適格株式移転により消滅をした新株予約権に代えて当該法人の新株予約権を交付した場合の当該株式移転完全子法人のその消滅の直前のその消滅をした新株予約権の帳簿価額に相当する金額
- 当該株式移転に伴い当該法人が当該法人の新株予約権に対応する債権を取得する場合には、その債権の価額を減算する
4.利益積立金額
利益積立金額は増減しない。
5.繰越欠損金の引継ぎ
繰越欠損金は引き継げない。
Ⅲ.リソースの譲渡者の税務(株式移転完全子法人の株主)
1.移転対価の取得価額
適格株式移転は金銭等不交付要件を満たすため、移転対価は株式移転完全親法人の株式である。金銭等不交付要件を満たす場合、その株式移転完全親法人の株式の取得価額は当該株式移転完全子法人の株式の当該株式移転の直前の帳簿価額に相当する金額に交付費用の額を加算した金額となる(法令119条1項11号)。なお株式移転に反対する当該株主に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産は株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されたかどうかの判定から除外される(同号かっこ書き)。
2.リソースの譲渡損益
適格株式移転は金銭等不交付要件を満たすため、譲渡損益は生じないものとされる(法法61条の2第11項)
Ⅳ.その他の当事者の税務
1.株式移転完全子法人の税務
(1)時価評価等
時価評価は行わない。