賃上げ促進税制とマルチステークホルダー方針

1.マルチステークホルダー方針を公表しなければ賃上げ促進税制の適用を受けられない場合

大企業向け賃上げ促進税制では、以下の法人はマルチステークホルダー方針を公表しなければ、賃上げ促進税制の適用を受けることができない(措法42条の12の5第1項かっこ書き)。

  • 当該事業年度終了の時において、資本金の額又は出資金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上の法人
  • 当該事業年度終了の時において常時使用する従業員の数が2,000人を超える法人

中堅企業向け賃上げ促進税制でも、以下の法人はマルチステークホルダー方針を公表しなければ、賃上げ促進税制の適用を受けることができない(措法42条の12の5第2項かっこ書き)。

  • 当該事業年度終了の時において、資本金の額又は出資金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である法人

中小企業向け賃上げ促進税制の適用を受ける場合、マルチステークホルダー方針を公表しなくても賃上げ促進税制の適用を受けることができる。

2.マルチステークホルダー方針の内容

マルチステークホルダー方針には以下の事項を記載しなければならない(令和4年厚生労働省・経済産業省・国土交通省告示第1号)。

  • 給与等の支給額の引上げ及び教育訓練等の実施の方針
  • 下請事業者その他の取引先との適切な関係の構築の方針
  • 上記のほか、その他の事業上の関係者との関係の構築の方針を定めているときは、その内容

3.マルチステークホルダー方針の公表等

マルチステークホルダー方針を公表するとともに、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない(経済産業省告示第88号第1条)。

マルチステークホルダー方針の公表はその法人のホームページに掲載する方法による(経済産業省告示第88号第2条1項)。公表は賃上げ促進税制の適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から起算して45日を経過する日又は当該公表を行った日から起算して1年を経過する日のうち、いずれか遅い日まで行わなければならない(経済産業省告示第88号第2条2項)。

また対象となる法人は賃上げ促進税制の適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から起算して45日を経過する日までに経済産業大臣に届けをしなければならない(経済産業省告示第88号第2条3項)。経済産業大臣は届出を受理した場合、通知書によりその旨の通知を行う。対象となる法人は賃上げ促進税制の適用を受けるために、この通知書の写しを確定申告書等に添付しなければならない(措令27条の12の5第2項)。