1.概要
居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については仕入税額控除ができなくなった。
2.居住用賃貸建物の定義及び範囲
居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するものをいう(消法30条10項)。住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物以外の建物が居住用賃貸建物に該当するため、住宅の貸付の用に供しないことが明らかでない建物は居住用賃貸建物に該当する。住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造及び設備の状況その他の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいう(消基通11-7-1)。
居住用賃貸建物に該当するかどうかは、原則として、課税仕入れを行った日の状況により判定する(消基通11-7-2本文)。課税仕入れを行った日において住宅の貸付けの用に供しないことが明らかでない建物について、課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日において、住宅の貸付の用に供しないことが明らかにされたときは、居住用賃貸建物に該当しないものとすることができる(消基通11-7-2但書)。
居住用賃貸建物に係る資本的支出も高額特定資産の仕入れ等に該当する場合は居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限が適用される(消基通11-7-5)。高額特定資産の仕入れ等に該当しない場合は適用されない。
3.居住用賃貸建物の取得時の仕入税額控除
居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額は仕入税額控除ができない。
ただし居住用賃貸建物であっても、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分がある居住用賃貸建物については、事業者がその居住用賃貸建物をその構造及び設備の状況その他の状況により当該部分と居住用賃貸部分とに合理的に区分しているときは、当該居住用賃貸部分に係る課税仕入れ等についてのみ仕入税額控除が適用されない(消令50条の2第1項)。
4.居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の仕入れに係る消費税額の調整
(1)居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合の調整
課税事業者が、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について仕入税額控除の制限を受けた場合において、その課税事業者が第三年度の課税期間の末日においてその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に課税賃貸用に供したときは、その有している居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税賃貸割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額につき、その課税事業者の第三年度の課税期間において仕入税額控除をする(消法35条の2第1項)。
第三年度の課税期間とは、居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の開始の日から三年を経過する日の属する課税期間をいう(消法35条の2第3項)。
課税賃貸割合とは、以下の算式により計算した割合をいう(消法35条の2第1項、消令53条の2第1項)。
事業者が調整期間に行ったその居住用賃貸建物の課税賃貸用の貸付けの対価の額の合計額から一定金額を控除した残額 ÷ 事業者が調整期間に行ったその居住用賃貸建物の貸付けの対価の額の合計額から、その調整期間に行ったその貸付けに係る資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額の合計額を控除した残額
(2)居住用賃貸建物を譲渡した場合の調整
課税事業者が、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額について仕入税額控除の制限を受けた場合において、その課税事業者がその居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡したときは、その譲渡をした居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税譲渡等割合を乗じて計算した金額に相当する消費税額をその課税事業者のその譲渡をした課税期間の仕入れに係る消費税額に加算する(消法35条の2第2項)。
課税譲渡等割合とは、以下の算式により計算した割合をいう(消法35条の2第2項、消令53条の2第2項)。
課税事業者が課税譲渡等調整期間に行ったその居住用賃貸建物の課税賃貸用の貸付けの対価の額の合計額とその事業者が行ったその居住用賃貸建物の譲渡の対価の額との合計額から一滴の金額を控除した残額÷課税事業者が課税譲渡等調整期間に行ったその居住用賃貸建物の貸付けの対価の額の合計額とその課税事業者が行ったその居住用賃貸建物の譲渡の対価の額との合計額から、その課税譲渡等調整期間に行ったその貸付け及びその譲渡に係る資産の譲渡等に係る対価の返還等の金額の合計額を控除した残額