一定の再生可能エネルギー発電設備については償却資産税の特例が適用される。特例の性質上再エネ特措法と関係が深い。再エネ特措法において再生可能エネルギー電気とは、再生可能エネルギー発電設備を用いて再生可能エネルギー源を変換して得られる電気をいい、再生可能エネルギー源とは、次のエネルギー源をいう(再エネ特措2条1項、3項)。
- ①太陽光
- ②風力
- ③水力
- ④地熱
- ⑤バイオマス
- ⑥その他政令で定めるもの
そして再生可能エネルギー発電設備とは、上記の再生可能エネルギー源を電気に変換する設備及びその附属設備をいう(再エネ特措法2条2項)。
再生可能エネルギー発電設備に係る償却資産税の特例の対象となる再生可能エネルギー発電設備は、上記の①から⑤をエネルギー源とするものに限られ、これを特定再生可能エネルギー発電設備という(地法附則15条25項)。特定再生可能エネルギー発電設備であって、令和6年4月1日から令和8年3月31日までの間に新たに取得されたものに対して課する固定資産税の課税標準は、当該特定再生可能エネルギー発電設備に対して新たに固定資産税が課されることとなった年度から3年度分の固定資産税に限り、次の区分に応じた特例割合を乗じて得た額とされる(地法附則15条25項)。特例割合は地方税法上は条例で定めることになっているため、注意する必要がある。
| エネルギー源 | 設備 | 特例割合 | 条文 | |||
| 認定 | 出力 | 原則 | 大臣配分資産等 | |||
| 一定の太陽光発電 | 認定発電設備に該当する設備 | 特例の適用なし | – | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 1,000kW未満 | 3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 2/3 | 地法附則15条25項1号イ 地規附則6条57項 | ||
| 1,000kW以上 | 4分の3を参酌して12分の7以上12分の11以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 3/4 | 地法附則15条25項3号イ | |||
| 風力発電 | 認定発電設備に該当する設備 | 20kW以上 | 3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 2/3 | 地法附則15条25項1号ロ 地規附則6条58項 | |
| 20kW未満 | 4分の3を参酌して12分の7以上12分の11以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 3/4 | 地法附則15条25項3号ロ | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 特例適用なし | – | ||||
| 水力発電 | 認定発電設備に該当する設備 | 5,000kW以上 | 4分の3を参酌して12分の7以上12分の11以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 3/4 | 地法附則15条25項3号ハ 地規附則6条64項 | |
| 5,000kW未満 | 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 1/2 | 地法附則15条25項4号イ | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 特例適用なし | – | ||||
| 地熱発電 | 認定発電設備に該当する設備 | 1,000kW以上 | 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 1/2 | 地法附則15条25項4号ロ | |
| 1,000kW未満 | 3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 2/3 | 地法附則15条25項1号ハ 地規附則6条59項 | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 特例適用なし | – | ||||
| バイオマス発電 | バイオマスのうち木竹に由来するもの又は農産物の収穫に伴って生ずるバイオマスを電気に変換するバイオマス発電設備 | 認定発電設備に該当する設備 | 20,000kW以上 | 特例適用なし | – | |
| 10,000kW以上20,000kW未満 | 7分の6を参酌して14分の11以上14分の13以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 6/7 | 地法附則15条25項2号 地規附則6条61項 | |||
| 10,000kW未満 | 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 1/2 | 地法附則15条25項4号ハ 地規附則6条65項 | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 特例適用なし | – | ||||
| 上記以外 | 認定発電設備に該当する設備 | 20,000kW以上 | 特例適用なし | – | ||
| 10,000kW以上20,000kW未満 | 3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 2/3 | 地法附則15条25項1号ニ 地規附則6条60項 | |||
| 10,000kW未満 | 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合 | 1/2 | 地法附則15条25項4号ハ 地規附則6条65項 | |||
| 認定発電設備に該当しない設備 | 特例適用なし | – | ||||
太陽光発電設備は次に掲げる太陽光発電設備及びこれと同時に設置する専用の架台、集光装置、追尾装置、蓄電装置、制御装置、直交変換装置又は系統連系用保護装置が特例の対象となる(地規附則6条56項)。
- 地球温暖化対策の推進に関する法律第22条の3第3項第1号に規定する認定地域脱炭素化促進事業計画に従い取得した設備であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するもの
- 出力50kW以上であること。
- 次に掲げるいずれかの要件に該当すること。
- 二酸化炭素排出抑制対策事業費交付金(地域脱炭素移行・再エネ推進交付金に限る。)、二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業に限る。)又は非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(需要家主導型太陽光発電の導入支援事業に限る。)を受けて取得した設備
- 地球温暖化対策の推進に関する法律第36条の24第1項に規定する対象事業活動支援の対象となる活動に係る事業により取得した設備
- 建築物の屋根に設ける設備でないこと。
- 公有地に設ける設備でないこと。
- 産業技術実用化開発事業費補助金(グリーンイノベーション基金補助金)又は特定公募型研究開発費補助金(グリーンイノベーション基金補助金)のうち、次世代型太陽電池の開発プロジェクトの支援を受けて取得した設備
認定発電設備とは、再生可能エネルギー発電事業計画につき経済産業大臣の認定を受けた再生可能エネルギー発電設備をいう(再エネ特措法2条5項)。太陽光発電は認定発電設備であると特例の適用を受けることができない。それに対して太陽光発電以外は認定発電設備でないと特例の適用を受けられない。認定を受けていないと供給促進交付金、いわゆるFIP交付金の交付が受けられないので、FIP交付金の交付を受けていれば認定発電設備と判断することができる(再エネ措置法2条の2第2項)。
大臣配分資産等とは、一般に二以上の市町村にわたって所在する固定資産等につき都道府県知事等が固定資産税評価額の配分を行う資産をいう(地法389条参照)。