親会社から子会社に対する無対価分割の税務

1.事例(前提)

親会社=分割法人P社
子会社=分割承継法人A社
出資関係A社はP社の100%子会社。この関係は分割後も継続することが見込まれる。
移転資産の時価100,000
移転資産のB社における簿価80,000
移転負債の時価60,000
移転負債のB社における簿価60,000
分割対価の種類無対価
分割による資本金の増加額0

2.分割の種類及び適格性の判定

(1)分割の種類

無対価分割でその分割の直前において分割法人が分割承継法人の株式を保有しており、かつ、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有していないため、分社型分割に該当する(法法2条1項12号の10ロ)。

(2)適格性の判定

分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有しており、かつ、当該分割後に当該分割法人による完全支配関係が継続することが見込まれているため、適格分割に該当する(法法2条1項12号の11イ、法令4条の3第6項1号ロ)。

(3)結論

適格分割型分割に該当する。適格分割型分割の税務については基本的に別記事「適格分社型分割の税務」を参照。

4.親会社(分割法人)の税務

(1)移転資産・移転負債の譲渡損益

簿価譲渡のため譲渡損益は生じない。

(2)移転資産・移転負債の簿価の差額の取扱

内国法人が当該内国法人を分割法人とし、当該内国法人の有する株式(以下「旧株」という。)を発行した法人を分割承継法人とする無対価型の適格分社型分割で、分割法人が分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する関係があるものを行った場合には、その旧株を発行した法人の株式で、その分社型分割の直後にその内国法人が有する株式の帳簿価額に当該分社型分割の直前の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を減算した金額を加算する(法令119条の3第23項二、119条の4第1項)。

(3)税務仕訳

まとめると以下の仕訳となる。

借方貸方
移転負債60,000移転資産80,000
A社株式20,000

5.子会社(分割法人)の税務

(1)移転資産・移転負債の取得価額

子会社は移転資産・移転負債を親会社の簿価で取得する。

(2)資本金等の額の増加

資本金等の額が、移転資産・移転負債の純資産価額から当該分社型分割による増加資本金額等を減算した金額増加する。移転資産・移転負債の純資産価額は20,000円である。分割により資本金は増加せず、かつ無対価であるため、増加資本金額等は0円である。従って資本金等の額は20,000円増加する。

(3)税務仕訳

まとめると以下の仕訳となる。

借方貸方
移転資産80,000移転負債60,000
資本金等の額20,000