合併の税務の基礎

1.概要

合併により被合併法人の資産負債は合併法人に移転する。税務上は譲渡等をしたものとされ、課税所得を計算する。また合併に伴い被合併法人の株主等は無対価合併でなければ、被合併法人の株式の対価として金銭等を取得する。そのため有価証券の譲渡損益が生じる。また非適格合併の場合、みなし配当が生じる。合併法人は被合併法人から資産負債を受取り、資本金等の額・利益積立金額が増加する。

2.非適格合併の税務

(1)被合併法人の税務

①移転資産負債の譲渡損益

内国法人が合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、その合併法人に移転をした資産及び負債のその合併時の価額による譲渡をしたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62条1項前段)。合併により合併法人に移転をした資産及び負債の移転による譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、その合併に係る最後事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法法62条2項)。

②合併対価の取扱い

非適格合併により合併法人に資産又は負債の移転をした内国法人は、合併法人から新株等をその時の価額により取得し、直ちに当該新株等又は当該分割対価資産を当該内国法人の株主等に交付したものとされる(法法62条1項後段)。

(2)被合併法人の株主の税務

①みなし配当

被合併法人の株主が非適格合併により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が被合併法人の資本金等の額のうちその交付の基因となつた被合併法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当等とみなされる(法法24条1項1号)。

配当等とみなされた金額については受取配当等の益金不算入の適用を受けることができる。

②被合併法人株式の譲渡損益

被合併法人の株主等は無対価合併でなければ、被合併法人の株式の対価として金銭等を取得するため、原則として、被合併法人の譲渡損益が生じる。その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入される(法法61条の2第1項)。譲渡利益額又は譲渡損失額は「その被合併法人株式の譲渡の時におけその被合併法人株式の譲渡により通常得べき対価の額」から「その被合併法人株式の譲渡に係る原価の額」を控除して計算する(法法61条の2第1項)。みなし配当がある場合、「その被合併法人株式の譲渡の時におけその被合併法人株式の譲渡により通常得べき対価の額」からみなし配当の金額を控除する(法法61条の2第1項1号かっこ書き)。

例外的に金銭等不交付合併に該当する場合、「その被合併法人株式の譲渡の時におけその被合併法人株式の譲渡により通常得べき対価の額」は被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額とされる(法法61条の2第2項)。通常「その有価証券の譲渡に係る原価の額」は被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額であるため、譲渡損期は生じない。

③合併法人又は合併親法人の株式等の取得価額

原則としてその取得の時における取得時の価額が取得価額となる。例外的に金銭等不交付合併に該当する場合、その合併に係る被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額に相当額が取得価額となる(法令119条1項5号)。

(3)合併法人の税務

①取得した資産負債の取得価額

特段の規定はないため、取得時の時価が取得価額となる。

②資産調整勘定等

内国法人が一定の非適格分社型分割により分割法人から資産又は負債の移転を受けた場合において、その対価が移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額を超えるときは、その超える部分の金額のうち政令で定める部分の金額は、資産調整勘定の金額とされる(法法62条の8第1項)。逆に分社型分割の対価が移転を受けた資産及び負債の時価純資産価額に満たないときは、その満たない部分の金額は、負債調整勘定の金額とされる(法法62条の8第3項)。

③資本金等の額の増加額

資本金等の額は資本金の額又は出資金の額に一定金額を加減算した金額である(法令8条1項)。そのため特段の規定はないが合併により増加した資本金の額又は出資金の額だけ資本金等の額は増加する。

上記とは別に合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額からその合併による増加資本金額等と抱合株式の合併の直前の帳簿価額とを合計した金額を減算した金額だけ資本金等の額の増加する(法令8条1項5号)。

移転を受けた資産及び負債の純資産価額は以下の区分に応じそれぞれに定める金額である。

下記以外合併に係る被合併法人の株主等に交付したその法人の株式、金銭並びにその株式及び金銭以外の資産並びに抱合株式に対して交付されたものとみなされるこれらの資産の価額の合計額
適格合併に該当しない合併のうち無対価合併で法令4条の3第2項第2号ロに掲げる関係があるもの移転を受けた資産の価額から当該合併により移転を受けた負債の価額を控除した金額 ※資産調整勘定等の金額を加味する

増加資本金額は以下の金額の合計額である。

  • 合併により増加した資本金の額又は出資金の額
  • 合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びにその金銭及びその法人の株式以外の資産の価額の合計額

④利益積立金額の増加額

非適格合併の場合、利益積立金額は増加しない。

3.適格合併の税務

(1)被合併法人の税務

①移転資産負債の譲渡損益

内国法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、合併法人に移転をした資産及び負債の適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する(法法62条の2第1項)。

(2)被合併法人の株主の税務

①みなし配当

適格合併の場合、みなし配当は生じない。

②被合併法人株式の譲渡損益

被合併法人の株主等は無対価合併でなければ、被合併法人の株式の対価として金銭等を取得するため、原則として、被合併法人の譲渡損益が生じる。その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入される(法法61条の2第1項)。譲渡利益額又は譲渡損失額は「その被合併法人株式の譲渡の時におけその被合併法人株式の譲渡により通常得べき対価の額」から「その被合併法人株式の譲渡に係る原価の額」を控除して計算する(法法61条の2第1項)。

例外的に金銭等不交付合併に該当する場合、「その被合併法人株式の譲渡の時におけその被合併法人株式の譲渡により通常得べき対価の額」は被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額とされる(法法61条の2第2項)。通常「その有価証券の譲渡に係る原価の額」は被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額であるため、譲渡損期は生じない。

③合併法人又は合併親法人の株式等の取得価額

原則としてその取得の時における取得時の価額が取得価額となる。例外的に金銭等不交付合併に該当する場合、その合併に係る被合併法人の株式の合併直前の帳簿価額に相当額が取得価額となる(法令119条1項5号)。

(3)合併法人の税務

①取得した資産負債の取得価額

特段の規定はないため、取得時の時価が取得価額となる。

②資産調整勘定等

適格合併の場合、資産調整勘定等は生じない。

③資本金等の額の増加額

資本金等の額は資本金の額又は出資金の額に一定金額を加減算した金額である(法令8条1項)。そのため特段の規定はないが合併により増加した資本金の額又は出資金の額だけ資本金等の額は増加する。

上記とは別に合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額からその合併による増加資本金額等と抱合株式の合併の直前の帳簿価額とを合計した金額を減算した金額だけ資本金等の額の増加する(法令8条1項5号)。

合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額から合併による増加資本金額等と抱合株式の合併の直前の帳簿価額とを合計した金額を減算した金額が資本金等の額の増加額となる(法令8条1項5号)。

適格合併の場合、移転を受けた資産および負債の純資産価額はその適格合併に係る被合併法人の適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額に相当する金額である(法令8条1項5号ロ)。

増加資本金額は以下の金額の合計額である(法令8条1項5号かっこ書き)。

  • 合併により増加した資本金の額又は出資金の額
  • 合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びにその金銭及びその法人の株式以外の資産の価額の合計額

④利益積立金額の増加額

「適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の移転資産の帳簿価額から移転負債の帳簿価額を控除した金額」から以下の金額を控除した金額が利益積立金額の増加額となる(法令9条2号)。

  • 適格合併による資本金等の額の増加額
  • 合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びにその金銭及びその法人の株式以外の資産の価額の合計額
  • 抱合株式の適格合併の直前の帳簿価額