1.適格合併の要件
合併が以下の要件を満たす場合、適格合併となる(法法2条12号の8)。
- 合併法人と被合併法人との間に一定の関係等があること
- 合併法人又は合併親法人の株式又は出資以外の資産が交付されないこと(金銭等不交付要件)
適格合併となる合併法人と被合併法人との間の関係等は大別すると以下の3つに分かれる。
- その合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による一定の完全支配関係(法法2条12号の8イ)
- その合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による一定の支配関係で一定の要件を満たすもの
- その合併に係る被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの(共同事業要件)
新設合併の場合、関係等は被合併法人間で判断する(法法2条12号の8イかっこ書き、ロかっこ書き、ハかっこ書き)。
2.適格合併となる完全支配関係
(1)基本
次のいずれかの関係がある場合、他の要件を満たすことで基本的に適格合併となる。
- 合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係がある場合(当事者間の完全支配関係、法令4条の3第2項1号)
- 合併前にその合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、合併後にその同一の者と当該合併に係る合併法人との間にその同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれている場合(法人相互の完全支配関係、法令4条の3第2項2号)
(2)無対価合併の場合
被合併法人の株主等に合併法人の株式その他の資産が交付されない合併を無対価合併という(法令4条の3第2項1号)。無対価合併の場合、追加の要件が必要となる。無対価合併の場合、合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有していなければ、適格合併となる当事者間の完全支配関係に該当しない(法令4条の3第2項1号かっこ書き)。また法人相互の完全支配関係については、以下の要件を満たさなければ、適格合併となる関係には該当しない(法令4条の3第2項2号かっこ書き)。
- 合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有すること
- 被合併法人及び合併法人の株主等の全てについて、その者が保有する被合併法人の株式の数の被合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とその者が保有する合併法人の株式の数の合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しいこと
3.適格合併となる支配関係
(1)基本
次のいずれかの支配関係がなければならない。
- 合併に係る被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による支配関係がある場合(当事者間の支配関係、法令4条の3第3項1号)
- 合併前にその合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による支配関係があり、かつ、合併後にその同一の者と合併に係る合併法人との間にその同一の者による支配関係が継続することが見込まれている場合(法人相互の支配関係、法令4条の3第3項2号)
上記の支配関係があり、さらに以下の要件をすべて満たす必要がある(法法2条12号の8ロ)。
- その合併に係る被合併法人の合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が合併後にその合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること
- その合併に係る被合併法人の合併前に行う主要な事業が合併後にその合併に係る合併法人において引き続き行われることが見込まれていること
(2)無対価合併の場合
無対価合併の場合、いずれか一方の法人による支配関係については、被合併法人及び合併法人の株主等の全てについて、その者が保有する被合併法人の株式の数の被合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合と者が保有する当該合併法人の株式の数の合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しくなければならない(法令4条の3第3項1号かっこ書き)。
4.共同事業要件
(1)基本
以下のすべての要件を満たすものをいう(法令4条の3)。
- 合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業とが相互に関連するものであること
- 合併に係る被合併法人の被合併事業とその合併に係る合併法人の合併事業のそれぞれの売上金額等の規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は合併前の被合併法人の特定役員のいずれかと合併法人の特定役員のいずれかとが合併後にその合併に係る合併法人の特定役員となることが見込まれていること
- 合併に係る被合併法人の合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者が合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていること
- 合併に係る被合併法人の被合併事業が合併後に合併法人において引き続き行われることが見込まれていること
- 合併により交付される合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式であって支配株主に交付されるものの全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていること
(2)無対価合併の場合
無対価合併の場合、被合併法人及び合併法人の株主等の全てについて、その者が保有する被合併法人の株式の数の被合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合と者が保有する当該合併法人の株式の数の合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しくなければならない(法令4条の3第4項かっこ書き)。
5.金銭等不交付要件
(1)原則
合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産が交付される場合、適格合併には該当しない(法法2条12号の8)。
(2)例外
以下の金銭等を交付しても、他の要件を満たせば適格合併に該当する。
- 株主等に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産(法法2条12号の8かっこ書き)
- 合併に反対する株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産(法法2条12号の8かっこ書き)
- 合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産(法法2条12号の8かっこ書き)
- 端株の買取り代金(法基通1-4-2)