金利スワップの特例処理の税務

金利スワップを行った場合、原則として会計でも税務でも時価評価を行い、評価損益を計上しなければならない。しかし金利スワップが一定の要件を満たす場合、会計上金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる(金融商品会計基準 注14)。これを金利スワップの特例処理という。

税務上も金利スワップの特例処理と同種の処理が認められている。すなわち以下の要件を満たす金利スワップは時価評価の対象外とされる(法法61条の5第1項、法規27条の7第2項)。

  • 金利の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるために行ったものであること。
  • その取引を行った日において、ヘッジ対象資産等の種類、名称、金額、金利変動損失額を減少させようとする期間、金利変動損失額を減少させるためにその取引を行った旨、その取引を事業年度終了の時において決済したものとみなさない旨及びその他参考となるべき事項をその取引に関する帳簿書類に記載したこと。
  • その取引の当事者がその取引の元本として定めた金額とヘッジ対象資産等の金額とがおおむね同額であること。
  • その取引を行う期間の終了の日とヘッジ対象資産等の償還等の期日がおおむね同一であること。
  • その取引の金利に相当する額の計算の基礎となる指標とヘッジ対象資産等から生ずる金利の計算の基礎となる指標とがおおむね一致していること。
  • その取引の金利に相当する額の受取又は支払の期日とヘッジ対象資産等から生ずる金利の支払又は受取の期日とがおおむね一致していること。
  • その取引の金利に相当する額がその取引を行う期間を通じて一定の金額又は特定の指標を基準として計算されること。

金利スワップの特例処理に関する会計と税務の要件は似ている部分もあるが異なる部分もある。比較は以下の通りである。

会計(実務指針178)税務
金利スワップの想定元本金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産又は負債の元本金額がほぼ一致していることその取引の当事者がその取引の元本として定めた金額とヘッジ対象資産等の金額とがおおむね同額であること。
金利スワップの契約期間金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致していること。その取引を行う期間の終了の日とヘッジ対象資産等の償還等の期日がおおむね同一であること。
金利等の基礎となるインデックス対象となる資産又は負債の金利が変動金利である場合には、その基礎となっていインデックスが金利スワップで受払される変動金利の基礎となっているインデックスとほぼ一致していること(おおむね5%いない)。その取引の金利に相当する額の計算の基礎となる指標とヘッジ対象資産等から生ずる金利の計算の基礎となる指標とがおおむね一致していること(おおむね5%以内(法基通2-3-38))
金利改定のインターバル金利スワップの金利改定のインターバル及び金利改定日がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ一致していること。要件なし
金利スワップの受払条件金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること要件なし
期限前解約オプション等がある場合金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアー又は受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること。要件なし
金利スワップの目的要件なし金利の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるために行つたものであること
帳簿書類への記載要件なしその取引を行った日において、ヘッジ対象資産等の種類等をその取引に関する帳簿書類に記載したこと。
金利等の受払の期日要件なしその取引の金利に相当する額の受取又は支払の期日とヘッジ対象資産等から生ずる金利の支払又は受取の期日とがおおむね一致していること。
金利相当額の計算の基準要件なしその取引の金利に相当する額がその取引を行う期間を通じて一定の金額又は特定の指標を基準として計算されること。

要件がすべて一致するわけではないため、会計上金利スワップの特例処理が認められるからといって税務上も認められるわけではない。ただ実務上金利スワップの特例処理を利用しようとする場合、税会不一致が生じないように会計上の要件も税務上の要件も満たすように設計されることが多いと思われる。