1.概要
グループ通算制度は法人グループ全体を一つの法人とみなして、課税する制度である。そのためグループ通算制度の開始・通算グループへの加入は合併と実態が似ている部分がある。そのため合併と同様にグループ通算制度の開始時又は加入時は原則としてその有する資産の時価評価を行わなければならない。また欠損金も切り捨てられる。グループ通算制度開始時の欠損金の取扱いは開始時の時価評価と連動している。時価評価を要しない法人の場合、開始時又は加入時に欠損金が切り捨てられないが、他の通算法人の所得とは通算することができない。
グループ通算制度の開始時又は加入時に時価評価を要しない法人を時価評価除外法人というが、時価評価除外法人であっても開始後又は加入後に一定の要件に該当した場合、一定の欠損金が切り捨てられる。
2.グループ通算制度開始時及び加入時の欠損金の切捨て
(1)時価評価除外法人に該当しない場合
通算法人が時価評価除外法人に該当しない場合には、その通算法人の通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においては、同日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額はないものとされ、切り捨てられる(法法57条6項)。
(2)時価評価除外法人に該当する場合
通算法人が時価評価除外法人に該当する場合、グループ通算制度の開始時又は加入時は欠損金は切り捨てられない。ただし特定欠損金となり、他の通算法人の所得と通算することはできない(法法67条の7第2項1号)
3.一定の時価評価除外法人が新しく事業を開始した場合の欠損金の切捨て
(1)欠損金が切り捨てられる場合
通算法人で時価評価除外法人に該当するものが以下のすべての要件を満たした場合、その通算法人の通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においては、一定の欠損金額はないものとされ、切り捨てられる(法法57条8項)。
- 通算承認の効力が生じた日の5年前の日又はその通算法人の設立の日のうちいずれか遅い日から通算承認の効力が生じた日まで継続して通算法人に係る通算親法人との間に支配関係がある場合として政令で定める場合に該当しないこと(通算法人が通算親法人である場合には他の通算法人のいずれかとの間で判定する、政令は法令112条の2第3項)
- その通算法人について通算承認の効力が生じた後にその通算法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当しないこと(政令は法令112条の2第4項)
- その通算法人が通算法人に係る通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなった日以後に新たな事業を開始したこと
(2)切り捨てられる欠損金
以下の欠損金が切り捨てられる(法法57条8項)。
- その通算法人の支配関係事業年度前の各事業年度で通算前10年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額
- その通算法人の支配関係事業年度以後の各事業年度で通算前10年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として政令で定める金額
(3)切り捨てられなかった欠損金
すべての欠損金が切り捨てられるわけではない。残った欠損金は特定欠損金となり、その通算法人の所得から繰越控除することができる。