1.固定資産税の概要
固定資産税は、固定資産に対し課税される税金であり、その固定資産の所有者が納付しなければならない税金である(地法342条1項、343条1項)。
(1)課税の対象
固定資産税の課税の対象である固定資産は①土地、②家屋及び③償却資産である(地法341条1号)。償却資産は土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却費が法人税又は所得税の課税所得の計算上経費となる一定の資産である。例えば法人が使用する機械や備品が償却資産に該当する。償却資産に対する固定資産税を一般に償却資産税という。
(2)課税標準
固定資産の課税標準はその土地・建物・償却資産税の価格である(地法349条1項、349条の2)。ここでいう価格とは適正な時価をいう(地法341条5号)。時価といっても実際の取引の中で成立する実勢価格ではなく、一定のルールにのっとり市町村が決定した金額である。この固定資産税の課税標準となる「時価」を一般に固定資産税評価額という。
固定資産税評価額は、原則として市町村長が決定する(地法403条1項)。しかし各市町村長が勝手に決めてしまうと市町村ごとに評価方法にばらつきが出てしまい、格差が生じてしまうそのため、市町村長は固定資産評価基準に基づき決定しなければならないとされている(地法403条1項)。固定資産評価基準は総務大臣が定める(388条1項)。固定資産評価基準に従わなかった場合や形式的に固定資産評価基準に従った場合は、違法とされる。
(3)税率
税率は1.4%である(地法350条1項)。ある土地の適正な時価が1,000万円であれば、特例が適用されない限り固定資産税は14万円となる。
(4)免税点
固定資産税には免税点がある。課税標準がそれぞれ以下の金額未満の場合、固定資産税は免除される(地税351条本文)。
土地 | 30万円 |
建物 | 20万円 |
償却資産 | 150万円 |
ただし財政上その他特別の必要がある場合、上記の金額に満たないときであっても、市町村の条例によって固定資産税を課することができる(地税351条但書)。
(5)課税方式
固定資産税は賦課課税方式の税金である。市町村が納税額を計算し、納税義務者に通知する税金である(地税364条1項)。ただし償却資産については、固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在におけるその償却資産について、その所、種類等の事項を1月31日までにその償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない(383条)。これを一般的に償却資産税の申告という。
(6)賦課期日
固定資産税の賦課期日は、その年の1月1日である(地税359条)。納期は4月・7月・12月・翌年2月の4回である(地法362条1項)。固定資産税額が市町村の条例で定める金額以下である場合、いずれか一の納期において、その全額を徴収することができる(地税362条2項)。納税義務者から自主的に一括で納付することができる(地税365条1項)。賦課期日がその年の1月1日であるため、例えば8月に固定資産税の対象である土地を譲渡しても譲渡人が12月・翌年2月の固定資産税の納税義務を負う。譲受人は譲り受けた年の固定資産税の納税義務は負わない。
(7)都市計画税
固定資産税と似た税目に都市計画税がある。都市計画税は土地及び建物に対して、その価格を課税標準として課税される(地税702条1項)。
都市計画税は固定資産税と異なり償却資産に対しては課税されない。また課税の対象となる土地及び建物も原則として市街化区域に所在するものに限られる(地税702条1項)。
課税標準である価格は固定資産税評価額が用いられる(地税702条2項)。
税率は0.3%が上限である(地税702条の4)。調べたことはないが、0.3%以外見たことはない。
2.固定資産税評価額の算定
固定資産税評価額は総務省が定めた固定資産評価基準に基づいて市町村が行う。固定資産評価基準では評価方法の大枠が定められているが、ざっくりまとめると資産別に以下の通りに評価する。
(1)土地
宅地等の地目別に売買実例価額等を基礎として、固定資産税評価額を算定する。なお土地の固定資産税評価額は公示価格等の7割が目安とされている(固定資産税評価基準 第1章 第12節 一)。
(2)建物
建物については再建築価格や経年劣化等により、固定資産税評価額を算定する。
(3)償却資産
償却資産の固定資産税評価額の算定方法は前年中に取得された償却資産と前年前に取得された償却資産で異なる。
前年中に取得された償却資産は、その償却資産の取得価額からその償却資産の取得価額に減価率の1/2を乗じて得た額を控除して評価する(固定資産評価基準 第3章 第1節 二)。減価率は耐用年数に応じて定められる。
前年前に取得された償却資産の評価は、その償却資産の前年度の評価額から当該償却資産の評価額に減価率を乗じて得た額を控除して評価する(固定資産評価基準 第3章 第1節 三)。ただし償却資産の評価額は、その償却資産の取得価額の5%相当額が下限となる(固定資産評価基準 第3章 第1節 十)。
3.固定資産税の特例
固定資産税にはいくつか特例がある。身近な特例には住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例と新築された住宅に対する固定資産税の減額の特例がある。
(1)住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例
住宅用地に対して課する固定資産税の課税標準はその面積が200㎡以下の部分についてはその価格の1/6とされ、200㎡を超える部分についてはその価格の1/3とされる(地税349条の3の2第1項、2項)。区分所有の場合、その部屋数に応じて増える。10部屋であれば、2000㎡以下の部分が1/6とされ、それを超える部分が1/3となる。
都市計画税についても同様の特例がある。200㎡以下の部分の課税標準は固定資産税評価額の1/3、それを超える部分の課税標準は固定資産税評価額の2/3となる(地法702条の3)。
(2)新築された住宅に対する固定資産税の減額
新築された住宅で政令で定めるものに対して課する固定資産税については、原則として、その住宅に対して新たに固定資産税が課されることとなった年度から三年度分の固定資産税に限り、その住宅に係る固定資産税額の2分の1に相当額がその住宅に係る固定資産税額から減額される(地法附則15条の6第1項)。
減額期間は認定長期優良住宅か否か、中高層耐火建築物か否かで変わる。認定長期優良住宅の場合、減額期間が基本的に5年となる(地法附則15条の7第1項)。また認定長期優良住宅以外の住宅であっても、一定の中高層耐火建築物の場合は減額期間が5年となる(地法附則15条の6第2項)。認定長期優良住宅のうち、一定の中高層耐火建築物の場合は減額期間が7年となる(地法附則15条の7第2項)。
基本 | 認定長期優良住宅 | |||
中高層耐火建築物以外 | 中高層耐火建築物 | 中高層耐火建築物以外 | 中高層耐火建築物 | |
条文 | 地法附則15条の6第1項 | 地法附則15条の6第2項 | 地法附則15条の7第1項 | 地法附則15条の7第2項 |
減額割合 | 1/2 | |||
減額期間 | 3年 | 5年 | 5年 | 7年 |
なお(1)の住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例は恒久的規定であるため、適用期限はない。またこの新築された住宅に対する固定資産税の減額の特例は都市計画税には適用されない(同種の規定がない)。