特定目的会社の税務

1.概要
特定目的会社は所定の要件を満たすことで、支払った配当の額を損金の額に算入することができる。この配当の損金算入が一番の特徴であるが、そのほかにもいくつか税務上特徴的な点がある。

2.配当の損金算入要件
(1)配当の損金算入要件の概要

  • ①特定目的会社名簿に登載されているものであること(措置法67条の14第1項1号イ)
  • ②次のいずれかに該当するものであること(措置法67条の14第1項1号ロ)
    • (1)その発行をした特定社債の発行価額の総額が1億円以上であるもの
    • (2)その発行をした特定社債が機関投資家その他これに類するものとして政令で定めるもののみによって保有されることが見込まれているもの
    • (3)その発行をした優先出資が50人以上の者によって引き受けられたもの
    • (4)その発行をした優先出資が機関投資家のみによって引き受けられたもの
  • ③資産流動化計画においてその発行をする優先出資又は基準特定出資の国内募集割合がそれぞれ50%を超える旨の記載又は記録があること(措置法67条の14第1項1号ハ、措置令39条の32の2第3項)
  • ④特定目的会社の会計期間が1年を超えないものであること(措置法67条の14第1項1号ニ、措置令39条の32の2第4項)
  • ⑤資産の流動化に係る業務及びその附帯業務を資産流動化計画に従って行っていること(措置法67条の14第1項2号イ)
  • ⑥資産の流動化に係る業務及びその附帯業務以外の業務を営んでいる事実がないこと(措置法67条の14第1項2号ロ)
  • ⑦資産の流動化に係る特定資産を信託財産として信託していること又は当該特定資産の管理及び処分に係る業務を他の者に委託していること(措置法67条の14第1項2号ハ)
  • ⑧当該事業年度終了の時において同族会社のうち政令で定めるものに該当するもの(②(1)又は(2)に該当するものを除く。)でないこと(措置法67条の14第1項2号ニ)
  • ⑨当該事業年度に係る利益の配当の支払額が当該事業年度の配当可能利益の額として政令で定める金額90%相当額を超えていること(措置法67条の14第1項2号ホ)
  • ⑩合名会社又は合資会社の無限責任社員となっていないこと(措置法67条の14第1項2号ヘ)
  • ⑪特定資産以外の資産を保有していないこと(措置法67条の14第1項2号ト、措置令39条の32の2第8項1号)
  • ⑫特定目的会社が特定借入れを行っている場合には、その特定借入れが機関投資家又は特定債権流動化特定目的会社からのものであり、かつ、当該特定目的会社に対して特定出資をした者からのものでないこと(措置法67条の14第1項2号ト、措置令39条の32の2第8項2号)
  • ⑬この規定の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に、この規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載及びその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書の添付があり、かつ、損金算入要件の②及び③の要件を満たしていることを明らかにする書類を保存していること(措置法67条の14第6項)

(2)【要件③】資産流動化計画においてその発行をする優先出資又は基準特定出資の国内募集割合がそれぞれ50%を超える旨の記載又は記録があること
配当を損金に算入するには資産流動化計画においてその発行をする優先出資又は基準特定出資の国内募集割合がそれぞれ50%を超える旨の記載又は記録がなければならない。国内募集割合とは、優先出資又は基準特定出資の発行価額の総額のうちに国内において募集又は割当て若しくは募集がされる優先出資又は基準特定出資の発行価額の占める割合をいう

(3)【要件⑧】当該事業年度終了の時において同族会社のうち政令で定めるものに該当するものでないこと
次のいずれかに該当する場合、原則として、配当を損金に算入することができない(措置法67条の14第1項2号ニ、措置令39条の32の2第5項)。

  • ①特定目的会社の出資者の三人以下並びにこれらと特殊の関係のある者がその特定目的会社の出資の総数の50%を超える数の出資を有する場合における当該特定目的会社
  • ②特定目的会社の出資者の三人以下及びこれらと特殊の関係のある者がその特定目的会社の次のイからニまでに掲げる議決権のいずれかにつきその総数の50%を超える数を有する場合における当該特定目的会社
    • イ 事業の全部若しくは重要な部分の譲渡、解散、継続、合併、分割、株式交換、株式移転又は現物出資に関する決議に係る議決権
    • ロ 役員の選任及び解任に関する決議に係る議決権
    • ハ 役員の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社が供与する財産上の利益に関する事項についての決議に係る議決権
    • ニ 剰余金の配当又は利益の配当に関する決議に係る議決権

ただし配当損金算入要件の②の(1)又は(2)に該当するものは上記の特定目的会社から除かれている(措置法67条の14第1項2号ニ)。そのため以下に該当する場合、この要件を満たすことができる。

  • (1)その発行をした特定社債の発行価額の総額が1億円以上であるもの
  • (2)その発行をした特定社債が機関投資家その他これに類するものとして政令で定めるもののみによって保有されることが見込まれているもの

通常特定目的会社の出資者は少ないため、同族会社に該当することが多い。そのため実務上1億円以上の特定社債を発行することにより、この要件とともに配当の損金算入要件の②の要件を満たすことが多い。

(4)【要件⑨】当該事業年度に係る利益の配当の支払額が当該事業年度の配当可能利益の額として政令で定める金額90%相当額を超えていること
①配当可能利益
支払配当を損金に算入するには配当可能利益の90%超を配当しなければならない。ここでいう配当可能利益は流動化法のものではなく、措置法上のものであり、以下の算式で計算する(措置令39条の32の2第6項、措置規22条の18の4第4項)。
流動化法の配当可能額 – 前期繰越損失 – 減損損失×70% – 特定社債控除

②減損損失
特別損失の性質を有する減損損失は細分化して、言い換えれば他の特別損失と分けて損益計算書の特別損失に計上しなければならない(特定目的会社の計算規則39条3項)。細分化された減損損失の額の70%相当額を配当可能利益の額から控除することができる(措置規22条の18の4第4項二)。

③特定社債控除
特定目的会社が特定社債を発行している場合、配当可能利益の額から政令で定める金額を控除することができる(措置法67条の14第1項2号ホ括弧書)。これを特定社債控除という。

特定社債控除の額は、原則として当該特定目的会社が発行した特定社債の当該事業年度終了の日における残高の5%相当額から当該事業年度開始の日における利益積立金額に相当する金額を控除した残額である(措置令39条の32の2第7項)。

当該事業年度において償還をした特定社債の額の合計額がある場合において、その合計額が償却費の額を超えるときは、特定社債控除の額に当該当該超える部分の金額に相当する金額に2を乗じて計算した金額を加算する(措置令39条の32の2第7項2号)。例外的に当該事業年度において特定社債の償還だけでなく、特定資産の譲渡又は特定社債の発行、特定約束手形の発行若しくは借入れ(以下「特定譲渡等」という。)が行われた場合、”当該事業年度において償還をした特定社債の額の合計額から当該特定譲渡等により調達された資金のうち特定社債の償還に充てられた金額を控除した金額”が償却費の額を超えるときは、当該当該超える部分の金額に相当する金額に2を乗じて計算した金額を加算する(措置令39条の32の2第7項1号)。

3.特定目的会社の配当に関する税務上留意点
(1)配当の損金算入時期
配当の損金算入要件を満たし、かつ、配当を行った場合、その配当の対象となった利益が生じた事業年度の損金の額に算入する。例えばX年度の利益は(X+1)年度に配当する。(X+1)年度に支払った配当は(X+1)年度の損金ではなく、X年度の損金となる。

(2)損金算入の対象となる配当の範囲
減資等で生じたみなし配当も含まれる。

(3)出資者側の処理
特定目的会社から支払いを受けた配当については受取配当等の益金不算入の規定は適用されない(措置法67条の14第4項)。これは特定目的会社の側で配当の損金算入要件を満たさない場合でも適用される。そのため配当の損金算入要件を満たさない場合、特定目的会社と出資者で課税され、二重課税が生じてしまう。

4.その他特定目的会社特有の税務
(1)特定目的会社に適用されない規定
以下の規定は特定目的会社に適用されない(措置法67条の14第2項)。

  • ①受取配当等の益金不算入
  • ②外国子会社から受ける配当等の益金不算入
  • ③外国税額控除

(2)特定目的会社と欠損金の繰越控除
内国法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額がある場合には、当該欠損金額に相当する金額は、当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる(法法57条1項)。この規定による損金算入限度額は原則として当該事業年度の所得の金額の50%相当額である(法法57条1項但書)。例えば繰り越された欠損金が1,500であり、この規定の適用前の当該事業年度の所得が1,000である場合、1,000÷2=500までしか損金に算入することができず、500の所得が生じ課税される。損金算入限度額には例外がいくつかある。例えば中小法人等である場合、損金算入限度額は当該事業年度の所得の金額となる(法法57条11項)。特定目的会社についても例外があり、配当の損金算入要件を満たしている場合、損金算入限度額は当該事業年度の所得の金額となる(措置法67条の14第2項)。

(3)流通税
別記事参照