1.電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務
所得税及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない(電帳法7条)。保存義務者とは国税に関する法律の規定により国税関係帳簿書類の保存をしなければならないこととされている者をいう(電帳法2条4号)。
2.電子取引の定義等
(1)電子取引の定義
取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう(電帳法2条5号)。取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう(電帳法2条5号かっこ書き)。
電子取引には、取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信手段を問わず全て該当するのであるため、次のような取引も、電子取引該当する(電帳通2-2)。
- いわゆるEDI取引
- インターネット等による取引
- 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)
- インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引
3.保存方法
(1)保存要件
電子取引の保存義務者は、電子取引を行ったときは当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を、原則として次の要件をすべて満たす形で保存しなければならない(電帳規4条1項)。
- 次のいずれかの措置を行うこと
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
- 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すこと。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
- 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
- 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
- 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
- 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
- 国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと(電帳規4条1項、2条2項2号)
- 国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと(電帳規4条1項、2条6項5号)
- 記録項目(取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先をいう。)を検索の条件として設定することができること。
- 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
- 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
(2)検索要件の省略①
電磁的記録の提示等の要求に応じることができるようにしている場合には、記録項目を検索の条件として設定することのみできればよい(電帳規4条1項かっこ書き)。
(3)検索要件の省略②
①すべて省略できる場合
保存義務者が、次のいずれかに該当する場合であって、電磁的記録の提示等の要求に応じることができるようにしているときは検索要件はすべて省略できる(電帳規4条1項かっこ書き)。
- その判定期間に係る基準期間における売上高が5,000万円以下である事業者である場合
- 国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面で整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものの提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしている場合
②基準期間における売上高
基準期間とは、個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいう(電帳規4条2項3号)。法人の場合、前々事業年度が1年未満である法人については、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間をいう(電帳規4条2項3号かっこ書き)。
③取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの
「取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたもの」とは、次に掲げるいずれかの方法により、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。以下「出力書面」という。)が課税期間ごとに日付及び取引先について規則性を持って整理されているものをいう(電帳通7-3)。
- 課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法
- 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
- 書類の種類ごとに、 又は と同様の方法により整理する方法
また上記のように整理された出力書面を基に、保存する電磁的記録の中から必要な電磁的記録を探し出せるようにしておく必要があり、かつ、探し出した電磁的記録をディスプレイの画面に速やかに出力できるようにしておく必要がある(電帳通7-3なお書き)。
4.災害その他やむを得ない事情等
保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により、要件を満たす形で当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることができなかったことを証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が要件を満たす形で当該電磁的記録の保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、当該電磁的記録の保存をすることができる(電帳規4条3項)。ただし、当該事情が生じなかったとした場合又は当該理由がなかったとした場合において、要件を満たす形で当該電磁的記録の保存をすることができなかったと認められるときは、この限りでない(電帳規4条3項但書)。