1.概要
投資信託が外国の株式等に投資し、その外国の株式等から配当等を受け取った場合、通常その配当等に対し外国で課税され、その外国税が源泉徴収された後の金額が信託に送金される。信託は最終的にその送金された金額を収益の分配として分配する。この際、源泉徴収された外国税相当額は収益分配時の源泉徴収額から控除されるとともに、所得税の計算においても控除することができる。所得税の計算においてこの源泉徴収された外国税相当額を控除することを分配時外国税相当額控除という。
2.対象
分配時調整外国税相当額控除の対象となる信託は集団投資信託のうち、国内にある営業所に信託されたものである(所法93条1項、176条3項)。集団投資信託とは以下のものをいう(所法176条3項、13条3項1号、法法2条29号ロ、法令14条の3)。
- 合同運用信託
- 証券投資信託
- 投資信託のうち、委託者指図型投資信託約款又は委託者非指図型投資信託約款において受託者(委託者指図型投資信託にあつては、委託者)による受益権の募集が公募により行われる旨の記載があり、かつ、受益権の発行価額の総額のうちに国内において募集される受益権の発行価額の占める割合が50%を超える旨の記載があるもの
- 特定受益証券発行信託
国内にある営業所に信託されたものに限られるため、外国の信託は対象とならない。
ここでは分配時調整外国税相当額控除の対象となる集団投資信託を単に国内集団投資信託という。
3.国内集団投資信託による収益の分配に係る源泉徴収時
国内集団投資信託が外国の株式等に投資し、その外国の株式等から配当等を受ける場合、通常外国で課税され、配当等の時に外国に源泉徴収される。この外国税相当額は当該集団投資信託の収益の分配時の源泉所得税から控除される(所法176条3項、所令300条2項)。源泉徴収時に控除される当該外国税相当額は収益の分配の額の計算上、収益の分配の額に加算する(所法176条4項)。
例えば国内集団投資信託が外国の株式に投資し、1,000の配当を受けたとする。外国で100課税され、源泉徴収されたとする。その国内集団投資信託は残りの900を受益者(投資家)に分配する。その際所得税が源泉徴収される。外国税相当額100は源泉徴収の際控除できるものとする。源泉徴収税額の計算上、この外国税相当額100は収益の分配の額に加算される。所得税の源泉徴収税額は通常 900×15.315% で137であるが、2点修正される。まず収益の分配の額に外国税相当額100が加算される。これだけだと源泉所得税は (900+100)×15.315% で153となる。しかし外国税相当額100が控除されるため、(900+100)×15.315% – 100 で53が源泉所得税となる。住民税については外国税相当額が収益の分配の額に加算されるが、控除はない。そのため住民税分は (900+100)×5% で50となる。所得税と住民税を合わせ、103源泉徴収される。
この外国税相当額は受益者に通知される(所令306条の2第6項等)。
4.所得税計算時の取扱い
源泉徴収の際に控除された外国税相当額は基本的に所得税額から控除することができる(所法93条1項)。これを分配時調整外国税相当額控除という(所法93条5項)。
分配時調整外国税相当額控除は確定申告書等に分配時調整外国税相当額を証する書類の添付がある場合に限り、適用される(所法93条2項、所規40条の10の2)。受益者への外国税相当額に関する通知書がこれに該当する(所規40条の10の2第1号)。