資産除去債務の税務

1.資産除去債務の税務

(1)資産除去債務の税務上の取扱い

資産除去債務の会計では資産除去債務を取得価額に算入するため、資産除去債務が適用されない場合よりも取得価額が大きくなり、減価償却費も大きくなる。しかし税務では資産除去債務を認める規定がないため、資産除去債務が適用される場合であっても、資産除去債務がないものとして減価償却を行う。そのため会計と税務の減価償却費の差額は税務上否認される。同様に資産除去債務に係る利息費用相当も税務上否認される。

(2)資産除去債務の税務調整(税効果なし)

①前提

  • 建物の購入金額:100,000
  • 耐用年数:5年
  • 資産の除去に必要な金額:1,000
  • 割引率:3%

②会計処理

減価償却費利息費用資産除去に係る費用
1年目20,173260
2年目20,173270
3年目20,173270
4年目20,173280
5年目20,171290
合計100,8631370

費用として計上される金額の総額は101,000円である。

③税務処理

減価償却費利息費用資産除去に係る費用
1年目20,00000
2年目20,00000
3年目20,00000
4年目20,00000
5年目20,00001,000
合計100,00001,000

損金に算入される金額の合計額は101,000円である。

④1年目の税務調整

【税務調整仕訳】
借方貸方
資産除去債務863建物863
建物173減価償却超過額173
資産除去債務26利息費用否認26
【別表五(一)】
区分期首現在利益積立金額当期の増減差引翌期現在利益積立金額
建物0△173△863△690
資産除去債務026863889

④5年目の税務調整

【税務調整仕訳】
借方貸方
建物171減価償却超過額171
資産除去債務29利息費用否認29
資産除去債務認容1,000資産除去債務1,000
【別表五(一)】
区分期首現在利益積立金額当期の増減差引翌期現在利益積立金額
建物△171△17100
資産除去債務971291,0000