自己株式取得の会計と税務

1.自己株式を取得する会社の会計と税務

(1)自己株式取得の会計

取得した自己株式は、その取得価額を純資産の部の株主資本から控除する(自己株式等会計基準7項)。

(1)自己株式取得の税務

資本金等の額が自己株式取得に係る取得資本金額減少する。取得資本金額は原則として以下の算式により計算した金額である。(法令8条1項20号イ)。

自己株式の取得等の直前の資本金等の額 ÷ その直前の発行済株式の総数 × 自己株式の取得等に係る株式の数

また自己株式の取得により交付した金銭等の額の合計額が取得資本金額を超える場合、その超える部分の金額利益積立金額が減少する(法令9条14号)。

(3)ケーススタディ

①前提

  • 自己株式の取得対価は現金100,000
  • 取得資本金額は70,000

②会計

借方貸方
自己株式100,000現金100,000

③税務

借方貸方
資本金等の額70,000現金100,000
利益積立金額30,000

④税務調整仕訳

別表五(一)を決算書と合わせ自己株式100,000計上することを考えると以下のようになる。

借方貸方
資本金等の額100,000自己株式100,000
利益積立金額30,000資本金等の額30,000

別表五(一)

【利益積立金額】
区分期首現在利益積立金額当期の増減差引翌期現在利益積立金額
資本金等の額00△30,000△30,000
【資本金等の額】
区分期首現在の資本金等の額当期の増減差引翌期現在資本金等の額
自己株式00△100,000△100,000
利益積立金額0030,00030,000

3.自己株式の取得を行った会社の株主の税務

自己株式の取得は原則としてみなし配当事由に該当する(法法24条1項5号)。みなし配当事由に該当する場合において、交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が自己株式を取得した法人の資本金等の額のうちその交付の基因となったその法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当等とみなされる(法法24条1項)。自己株式の取得等をした法人をみなし配当の文脈では取得等法人という(法令23条1項6号イ)。資本金等の額のうちその交付の基因となったその法人の株式又は出資に対応する部分の金額は次の算式により計算した金額である。

取得等法人の自己株式の取得等の直前の資本金等の額÷その直前の発行済株式等の総数×株主が当該直前に有していた当該取得等法人のその自己株式の取得等に係る株式の数を乗じて計算した金額

自己株式の取得により株主が交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちみなし配当に該当しない部分の金額は株式の譲渡対価の金額となり、有価証券の譲渡損益が生じる。