1.現物分配と株式分配の意義
(1)現物分配の意義
現物分配とは法人がその株主等に対し次に掲げる事由により金銭以外の資産の交付をすることをいう(法法2条12号の5の2かっこ書き)。
- 剰余金の配当等
- 解散による残余財産の分配
- 自己の株式又は出資の取得
- 出資の消却等
- 組織変更
(2)株式分配の意義
株式分配とは、剰余金の配当又は利益の配当として行われる現物分配のうち現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人の発行済株式等の全部が移転するものをいう(法法2条12号の15の2)。例えばX社の発行済株式をAが60%、Bが40%を有していたとする。さらにX社がY社の発行済株式の100%を有しているものとする。このときX社が剰余金の配当としてA社とB社にY社の発行済株式のすべてを移転することが株式分配に該当する。
ただしその現物分配により発行済株式等の移転を受ける者がその現物分配の直前において現物分配法人との間に完全支配関係がある者のみであるものは株式分配に該当せず、現物分配となる(法法2条12号の15の2かっこ書き)。例えばA社がB社の発行済株式の全部を有しており、B社がC社の発行済株式の全部を有しているものとする。この場合においてC社をA社の子会社とするため、B社が剰余金の配当としてC社の発行済株式の全部をA社に移転した場合、発行済株式等の移転を受ける者が現物分配法人であるB社との間に完全支配関係があるA社のみであるため、株式分配ではなく、現物分配に該当する。
2.現物分配と株式分配の比較
株式分配は現物分配の一部であるが、現物分配とは異なる取扱いが定められている点がある。
(1)現物分配法人
①利益積立金額の減少
剰余金の配当として現物分配が行われた場合、株主等に交付した資産の時価相当額利益積立金額が減少する(法令9条8号、適格現物分配の場合は交付した資産の簿価)。株式分配も剰余金の配当又は利益の配当として行われたものであるため、交付した株式の時価相当額利益積立金額が減少しそうである。しかし適格株式分配の場合、利益積立金額は減少しない(法令9条8号かっこ書き、11号かっこ書き)。非適格株式分配の場合でも、交付した株式の時価から一定金額を減算した金額しか減少しない。
②資本金等の額の減少
剰余金の配当して行われた現物分配の場合、資本金等の額は減少しない。それに対して株式分配の場合、利益積立金額が減少しない分資本金等の額が減少する。適格株式分配の場合、交付した株式の簿価相当額資本金等の額が減少する。非適格株式分配の場合も現物分配法人の非適格株式分配直前の資本金等の額に株式分配割合を乗じて計算した金額、資本金等の額が減少する。
(2)被現物分配法人
剰余金の配当として行われる現物分配の場合、配当として課税される。非適格現物分配の場合、受取配当等の益金不算入の規定が適用され、適格現物分配の場合、全額益金の額に算入されない。
それに対し株式分配の場合、有価証券の譲渡損益として課税される。金銭等不交付株式分配の場合、譲渡対価と譲渡原価の額が同額とされ譲渡損益は生じない。