1.納税義務の免除の特例
法人の場合、消費税の納税義務は原則として前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下である場合に免除される(消法9条1項)。特に設立直後の第一期と第二期については前々事業年度がないため、原則として消費税の納税義務は免除される(消基通1-4-6)。
消費税の納税義務の免除に関する例外はいくつかあるが、基準期間がない場合に限り適用されるものがある。その一つが新設法人の納税義務の免除の特例である。その事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である法人を新設法人という(消法12条の2第1項)。この新設法人は消費税の納税義務を負う。言い換えれば法人に基準期間がない場合において、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上であるときは、消費税の納税義務を負う(消法12条の2第1項)。
この特例は基準期間がない場合に限り適用される。従って第三期以降は基準期間があるため、適用されない。第三期以降は資本金が1,000万円超であっても、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が免除される。
資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上であるかどうかは事業年度の終了の日ではなく、開始の日に判断する。そのため例えば設立後第二期の開始時の資本金の額が500万円で、事業年度の中途において増資し資本金が2,000万円となった場合、事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円未満であるため、この規定は適用されない。
2.新設法人が調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合
新設法人の消費税の納税義務の免除の特例により納税義務が免除されない課税期間で原則課税の適用を受ける課税期間中に調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合には、その新設法人のその調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間からその課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については消費税の納税義務を負う(消法12条の2第2項)。調整対象固定資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産でその価額が100万円以上のものをいう(消法2条1項16号)。
この規定は新設法人が原則課税の適用を受けた課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合に適用されるため、簡易課税の適用を受けた課税期間中に調整対象固定資産を取得してもこの規定は適用されない。