1.概要
支払利息は損金に算入できるため、支払利息を多くすることで、日本における税負担を軽減することができる。そのため対象となる支払利子等の額からこれらに対応する受取利息を控除した金額のうち所得に一定の調整を加えた金額の20%を超える部分の金額につき当期の損金の額に算入しないこととする制度が作られた。これを過大支払利子税制という。
2.対象となる支払利子等
過大支払利子税制はすべての支払利子等が対象となるわけではない。過大支払利子税制の対象となる支払利子等を対象支払利子等という。対象支払利子等は積極的に定義されているわけではなく、支払利子等のうち(過大支払利子税制の)対象外支払利子等以外のものが対象支払利子等とされる(措置法66条の5の2第2項1号)。
次に掲げるものが対象外支払利子等とは次に掲げるものをいう(措置法66条の5の2第2項3号)。
①支払利子等を受ける者の(日本の)課税対象所得に含まれる支払利子等
②一定の公共法人に対する支払利子等
③特定債券現先取引等に係るものとして政令で定める支払利子等
④生命保険会社の締結した保険契約及び損害保険会社の締結した保険契約に係る支払利子等のうち政令で定めるもの
⑤特定債券利子等
重要なのが①である。支払利子等を受ける者において日本の課税対象所得に含まれるものは対象外支払利子等に該当し、過大支払利子税制の対象となる支払利子等から除外される。従って対象支払利子等は支払利子等を受ける者の側において日本で課税されない利子等となる。具体的には外国の金融機関の外国支店に対する支払利子等が対象支払利子等となる。日本の金融機関に対する支払利子等は日本で課税されるため対象外支払利子等に該当する。
3.損金不算入額の計算等
(1)損金不算入額
法人のその事業年度の対象純支払利子等の額が当該法人のその事業年度の調整所得金額の20%相当額を超える場合、その超えた部分の金額が損金の額に算入されない(措置法66条の5の2第1項)。
(2) 対象純支払利子等の額
対象支払利子等の額の合計額から一定の受取利子等の合計額を控除することができる。控除対象となる受取利子等の合計額を控除対象受取利子等合計額といい、対象支払利子等の額の合計額から控除対象受取利子等合計額を控除した残額を対象純支払利子等の額という。
控除対象受取利子等合計額とは、当該事業年度の受取利子等の額の合計額を当該事業年度の対象支払利子等合計額の当該事業年度の支払利子等の額の合計額に対する割合で按分した金額として政令で定める金額をいう(措置法66条の5の2第2項6号)。
(3)調整所得金額
調整所得金額とは、対象純支払利子等の額と比較するための基準とすべき所得の金額として政令で定める金額をいう(措置法66条の5の2第1項)。具体的には法人税法の一定の規定を適用せず計算した所得金額に以下の加算項目を加算し、減算項目を減算した金額である(措置令39条の13の2第1項)。
加算項目 | 対象純支払利子等の額 |
損金の額に算入される減価償却費 | |
匿名組合契約等により匿名組合員に分配すべき利益の額で当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額 | |
減算項目 | 特定子法人の課税対象金額等 |
調整対象超過利子額の損金算入に係る特定子法人の課税対象金額等 | |
匿名組合契約等により匿名組合員に負担させるべき損失の額で当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額 |
4.適用除外
過大支払利子税制は以下の場合、適用されない(措置法66条の5の2第3項)。
①法人の当該事業年度の対象純支払利子等の額が2,000万円以下であるとき。
②内国法人及び当該内国法人との間に特定資本関係のある他の内国法人の当該事業年度に係るイに掲げる金額が当該内国法人及び当該他の内国法人の当該事業年度に係るロに掲げる金額の20%相当額を超えないとき。
イ 対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額の合計額を控除した残額
ロ 調整所得金額の合計額から調整損失金額(定義箇所不明)の合計額を控除した残額(措置令39条の13の2第29項)
この適用除外の規定は確定申告書等に適用除外の適用がある旨を記載した書面及びその計算に関する明細書の添付があり、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り、適用される(措置法66条の5の2第3項)。
5.損金不算入額の繰越
過大支払利子税制の適用により損金に算入されなかった金額は7年間繰り越すことができる。過大支払利子税制により損金の額に算入されなかった金額で、いまだこの損金不算入額の繰越の規定により損金に算入されていない金額を超過利子額という。法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度において超過利子額がある場合には、当該超過利子額に相当する金額は、当該法人の当該各事業年度の調整所得金額の20%相当額から対象純支払利子等の額を控除した残額に相当する金額を限度として、当該法人の当該各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(措置法66条の5の3第1項)。