不動産証券化と金融商品取引業(自己募集・自己運用)

1.GK-TKスキーム(匿名組合)
(1)自己募集
有価証券の募集又は私募は第二種金融商品取引業に該当する可能性がある。その他の第一種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業には該当しない。

すべての有価証券の募集又は私募が第二種金融商品取引業に該当するわけではなく、次の有価証券の募集又は私募のみが第二種金融商品取引業に該当する(金商法28条2項1号、2条8項7号)。
①投資信託の受益証券のうち、投委託者指図型投資信託の受益権に係るもの
②外国投資信託の受益証券
③抵当証券
④外国又は外国の者の発行する証券のうち、抵当証券の性質を有するもの
⑤①若しくは②に掲げる有価証券に表示されるべき権利又は③若しくは④に掲げる有価証券のうち内閣府令で定めるものに表示されるべき権利であって、有価証券とみなされるもの
⑥いわゆる集団投資スキーム持分又は外国における集団投資スキーム持分相当
⑦その他政令で定める有価証券
匿名組合出資は⑥の集団投資スキーム持分に該当するため、その募集又は私募は第二種金融商品取引業に該当する。そのため匿名組合出資の自己募集をするには原則として第二金融商品取引業の登録を受けなければならない。

(2)自己運用
金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として、一定の権利を有する者から出資又は拠出を受けた金銭その他の財産の運用を行うことは投資運用業に該当する(金商法28条4項3号、2条8項15号ハ)。一定の権利とは次のものをいう。
①受益証券発行信託の受益証券又は外国における受益証券発行信託の受益証券相当の証券に表示される権利
②信託の受益権又は外国における信託の受益権相当
③いわゆる集団投資スキーム持分
④その他政令で定める権利

匿名組合出資は集団投資スキーム持分であるため、それにより出資を受けた金銭その他の財産を金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用する場合、投資運用業に該当する。現物の不動産を運用する場合、有価証券等に対する投資ではないため、投資運用業に該当しない。それに対し信託受益権は金商法の有価証券に該当する(金商法2条2項1号)。従って信託された不動産を運用する場合、有価証券又はデリバティブ取引に係る債権に対する投資となり、投資運用業に該当する。

2.特定目的会社
(1)自己募集
特定目的会社の優先出資はその募集又は私募が第二種金融商品取引業に該当する有価証券ではない。そのため特定目的会社の優先出資の募集又は私募は第二種金融商品取引業に該当しない。

(2)自己運用
特定目的会社の優先出資はその出資を受けた金額を主として有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用しても投資運用業に該当する権利ではない。そのため現物の不動産で運用する場合も、信託された不動産で運用する場合も、いずれも投資運用業に該当しない。