1.概要
一定の非適格合併等が行われた場合、資産調整勘定又は差額負債調整勘定の例外的な計算が適用される。令和7年税制改正により一部改正されており、令和7年4月1日以降に行われた非適格合併等については改正後の規定が適用される。
2.対象となりうる非適格合併等
以下の非適格合併等の場合、資産調整勘定・差額負債調整勘定の例外的な計算が適用される(法令123条の10第16項)。
- 無対価合併で、被合併法人及び合併法人の株主等の全てについて、その者が保有する当該被合併法人の株式の数の当該被合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合と当該者が保有する当該合併法人の株式の数の当該合併法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しいもの
- 無対価分割で、分割法人の株主等及び分割承継法人の株主等の全てについて、その者が保有する当該分割法人の株式の数の当該分割法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合と当該者が保有する当該分割承継法人の株式の数の当該分割承継法人の発行済株式等の総数のうちに占める割合とが等しいもの
- 無対価分割で、分割法人が分割承継法人の発行済株式若しくは出資の全部を保有する関係があるもの
3.例外的計算の対象となりうる非適格合併等について一定の資産評定を行っている場合
例外的計算の対象となりうる非適格合併等について一定の資産評定を行った場合、「当該非適格合併等により移転を受けた事業に係る営業権の当該資産評定による価額」と「当該非適格合併等により移転を受けた事業に係る将来の債務で当該内国法人がその履行に係る負担の引受けをしたものの額として財務省令で定める金額」の差額が資産調整勘定又は差額負債調整勘定の金額となる(法令123条の10第16項1号)。ただし当該非適格合併等により移転を受けた資産の取得価額及び移転を受けた事業に係る営業権の当該資産評定による価額の合計額が当該非適格合併等により移転を受けた負債の額の合計額に満たない場合、資産調整勘定及び差額負債調整勘定の金額はないものとされる(法令123条の10第16項1号かっこ書き)。
資産評定は非適格合併等により移転する資産及び負債の価額の公正な価額による評定で、当該非適格合併等の後に当該資産及び負債の譲渡を受ける者、当該資産及び負債を有する法人の株式若しくは出資の譲渡を受ける者その他の利害関係を有する第三者又は公正な第三者が関与して行われるものに限られる(法規27条の16第3項)。
営業権には独立取引営業権を含まない(法令123条の10第16項1号イかっこ書き)。
将来の債務には退職給与債務・短期重要債務及び既にその履行をすべきことが確定しているものは含まれない(法令123条の10第16項1号ロかっこ書き)。また将来の債務でその履行に係る負担の引受けをした額は将来の債務のうち次に掲げるものの額とされる(法規27条の16第4項)。
- 資産評定による価額が当該資産評定を基礎として作成された貸借対照表に計上されている負債に係るもの
- その額、その算定の根拠を明らかにする事項及びその算定の基礎とした事項を記載した書類を保存している場合のその書類に記載されているもの
4.資産調整勘定又は差額負債調整勘定の金額がないとされる場合
以下の場合、資産調整勘定又は差額負債調整勘定の金額はないとされる(法令123条の10第16項2号)。
- 当該非適格合併等に際して資産評定を行っていない場合において、当該非適格合併等により移転を受けた資産の取得価額の合計額が当該非適格合併等により移転を受けた負債の額の合計額以上であるとき
- 当該非適格合併等により移転を受けた資産の取得価額の合計額が当該非適格合併等により移転を受けた負債の額の合計額に満たない場合
移転を受けた負債の額には、退職給与負債調整勘定の金額、短期重要負債調整勘定の金額、将来の債務で当該内国法人がその履行に係る負担の引受けをしたものの金額が含まれる。