法人における組合事業による損益の取込

1.組合事業による損益の帰属

組合には法人格はないため、組合事業による損益は各組合員に直接帰属する(法基通14-1-1)。ここでいう組合事業とは任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合により営まれる事業をいう。

ただし組合事業等による損失がある場合の課税の特例の適用がある場合、損失の取込は制限される。組合事業等による損失がある場合の課税の特例については別の記事を参照。

2.組合事業から生ずる利益等の帰属時期

組合事業による損益は通達上の原則としてはその損益が生じた期間に対応する組合員の各事業年度の期間に帰属する(法基通14-1-1の2)。ただし当該組合事業に係る損益を毎年1回以上一定の時期において計算し、かつ、当該法人への個々の損益の帰属が当該損益発生後1年以内である場合には、帰属損益額は、当該組合事業の計算期間を基として計算し、当該計算期間の終了の日の属する当該法人の事業年度の益金の額又は損金の額に算入する(法基通14-1-1の2但書)。実務上はこの例外規定が適用される場合がほとんどであると思われる。

3.組合事業から生ずる利益等の額の計算方法

法人が組合事業による損益を取込む方法には税務通達上以下の三つがある。

  • 総額法
  • 中間法
  • 純額法

総額法は組合事業の資産・負債・収益・費用を組合員の分配割合に応じて取込む方法である。仮に総額200,000の出資を集め、すべて上場株式に投資をする投資事業有限責任組合があり、1年間で配当が10,000が発生し、1,500源泉税を徴収されていたとする。A社がこの組合に100,000出資し、分配割合も50%とする。出資時の仕訳は以下のようになる。

借方 貸方
100,000 100,000

総額法では資産・負債・収益・費用等もすべて総額で計上するため、取込時の仕訳は以下のようなものが考えられる。

借方 貸方
100,000 100,000
4,250 5,000
750

総額法では税法の適用に関し、前述の組合事業等による損失がある場合の課税の特例以外の特別の取扱いはない。

中間法は当該組合事業の収益及び費用をその分配割合に応じて取込む方法である。前述の例では以下のような仕訳が考えられる。

借方 貸方
4,250 5,000
750

中間法では組合事業の資産・負債は取込まないため、収益及び費用の差額の勘定科目は「出資金」等となると考える。中間法の場合、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用を受けることができるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用を受けることができない(法基通14-1-2(2))。

純額法は当該組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて取込む方法である。資産・負債のみならず、収益・費用も個別の勘定科目としては取込まない。前述の例では以下のような仕訳が考えられる。

借方 貸方
4,250 4,250

純額法の場合、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定のみならず、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用を受けることができない(法基通14-1-2(3))。

4.出資割合と分配割合

損益の分配割合と出資割合は必ずしも一致しない。分配割合が各組合員の出資割合と異なる場合は、当該分配割合は各組合員の出資の状況、組合事業への寄与の状況などからみて経済的合理性を有するものでなければならないこと(法基通14-1-2(注)1)。