分割等があった場合の納税義務の免除の特例

1.概要

分割は吸収分割と新設分割に分けることができる。納税義務の免除の判断も吸収分割と新設分割等で分かれる。

納税義務の免除の判断上新設分割と同様の規定が、以下の行為に適用される。

  • 法人が新たな法人を設立するためその有する金銭以外の資産の出資をし、その出資により新たに設立する法人に事業の全部又は一部を引き継ぐ場合におけるその新たな法人の設立
  • 法人が新たな法人を設立するため金銭の出資をし、新たな法人と会社法第467条第1項第5号に掲げる行為に係る契約を締結した場合におけるその契約に基づく金銭以外の資産の譲渡のうち、新たな法人の設立の時において発行済株式の全部をその法人が有している場合であることその他政令で定める要件に該当するもの

この二つと新設分割を合わせて新設分割等という。

また納税義務の免除の判断において、特定要件という用語が出てくる。特定要件とは、新設分割子法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の100分の50を超える数又は金額の株式又は出資が新設分割親法人及び当該新設分割親法人と特殊な関係にある者の所有に属する場合その他政令で定める場合であることをいう(消法12条3項かっこ書き)。

2.吸収分割に係る分割承継法人

(1)吸収分割があった場合

吸収分割があった場合において、分割法人の分割承継法人の吸収分割があった日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、分割承継法人のその吸収分割があった日の属する事業年度の吸収分割があった日からその吸収分割があった日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税納税義務は免除されない(消法12条5項)。

分割法人の分割承継法人の吸収分割があった日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、分割承継法人の吸収分割があった日の属する事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した分割法人の各事業年度における課税売上高の合計額をそれらの各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条6項)。

(2)その事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に吸収分割があった場合

分割承継法人のその事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に吸収分割があった場合において、分割法人のその分割承継法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その分割承継法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税納税義務は免除されない(消法12条6項)。

分割法人のその分割承継法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、割承継法人の当該事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した同項の分割法人の各事業年度における課税売上高の合計額を当該各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条7項)。

4.新設分割等に係る新設分割親法人

新設分割親法人のその事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に分割等があった場合において、その事業年度の基準期間の末日において新設分割子法人が特定要件に該当し、かつ、その新設分割親法人のその事業年度の基準期間における課税売上高とその新設分割子法人の新設分割親法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超えるときは、その新設分割親法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税の納税義務は免除されない(消法12条4項)。

新設分割子法人の新設分割親法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、新設分割親法人のその事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した新設分割子法人の各事業年度における課税売上高の合計額をそれらの各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条5項)。

5.新設分割等に係る新設分割子法人

(1)新設分割等があった場合

新設分割等があった場合において、新設分割親法人の新設分割子法人の新設分割等があった日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その新設分割子法人のその新設分割等があった日からその新設分割等があった日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税納税義務は免除されない(消法12条1項)。

新設分割親法人の新設分割子法人の新設分割等があった日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、新設分割子法人の新設分割等があった日の属する事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した新設分割親法人の各事業年度における課税売上高の合計額をそれらの各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条1項)。

(2)その事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に新設分割等があつた場合

新設分割子法人のその事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に新設分割等があった場合において、新設分割親法人のその新設分割子法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その新設分割子法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税納税義務は免除されない(消法12条2項)。

新設分割親法人のその新設分割子法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、新設分割子法人のその事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した新設分割親法人の各事業年度における課税売上高の合計額をそれらの各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条2項)。

(3)新設分割子法人のその事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に新設分割等があった場合

新設分割子法人のその事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に新設分割等があった場合において、その事業年度の基準期間の末日において新設分割子法人が特定要件に該当し、かつ、新設分割子法人のその事業年度の基準期間における課税売上高と新設分割親法人のその新設分割子法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超えるときは、その新設分割子法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、消費税納税義務は免除されない(消法12条3項)。

新設分割子法人のその事業年度の基準期間における課税売上高は、その新設分割子法人の基準期間中の国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額からその基準期間における売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をその基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条3項)。ただし特定事業年度中に新設分割等があった場合には、その計算した金額をその特定事業年度の月数の合計数で除し、これに新設分割等があった日から特定事業年度のうち最後の事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算する(消令23条3項かっこ書き)。特定事業年度とは、その新設分割子法人のその事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した新設分割親法人の各事業年度をいう(消令23条3項かっこ書き)。

新設分割親法人のその新設分割子法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における課税売上高は、その新設分割親法人の特定事業年度における課税売上高の合計額を特定事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算する(消令23条4項)。