前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例

1.前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例

(1)基本的な内容

基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として消費税の納税義務が免除される。ただし例外もある。その一つが前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例である。個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合においても、その個人事業者又は法人のうちその個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高及び給与等の合計額が1,000万円を超えるときは、その個人事業者のその年又は法人のその事業年度における消費税納税義務は免除されない(消法9条の2第1項、3項)。

(2)特定期間の意義

特定期間は個人事業者と法人で異なる。

①個人事業者の場合

個人事業者の場合、特定期間とはその年の前年1月1日から6月30日までの期間をいう(消法9条の2第4項1号)。

②法人の場合

法人の場合、特定期間とは原則として前事業年度開始の日以後6月の期間をいう(消法9条の2第4項2号)。ただし前事業年度が短期事業年度の場合、原則としてその事業年度の前々事業年度開始の日以後6月の期間をいう(消法9条の2第4項3号)。前々事業年度が6月以下の場合には、例外の例外として前々事業年度開始の日からその終了の日までの期間が特定期間となる(消法9条の2第4項3号かっこ書き)。

短期事業年度とは以下のものをいう(法令20条の5第1項)。

  • その事業年度の前事業年度で7月以下であるもの
  • その事業年度の前事業年度(7月以下であるものを除く。)で前事業年度開始の日以後6月の期間の末日の翌日からその前事業年度終了の日までの期間が2月未満であるもの

また前々事業年度から以下のものが除外される(法令20条の5第2項)。

  • その事業年度の前々事業年度で当該事業年度の基準期間に含まれるもの
  • その事業年度の前々事業年度(6月以下であるものを除く。)で前事業年度開始の日以後6月の期間の末日の翌日からその前々事業年度の翌事業年度終了の日までの期間が2月未満であるもの
  • その事業年度の前々事業年度(6月以下であるものに限る。)でその翌事業年度が2月未満であるもの

(3)特定期間における課税売上高の計算

特定期間における課税売上高とは、その特定期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額をいう(消法9条の2第2項)。

(4)給与等の合計額による判定

国外事業者以外の事業者はその特定期間中に支払った給与等の合計額をもって、特定期間における課税売上高とすることができる(消法9条の2第3項、消規11条の2)。従って特定期間における課税売上高と給与等の合計額の両方が1,000万円を超えている場合、消費税の納税義務は免除されない。どちらか一方が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務の免除を受けるかを選択することができる。