1.課税事業者選択届出書
基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として消費税の納税義務が免除される。ただし例外もある。その一つが課税事業者選択届出書である。課税事業者選択届出書とは、その基準期間における課税売上高が1,000万円以下である課税期間につき、小規模事業者に係る消費税の納税義務の免除の規定の適用を受けない旨を記載した届出書をいう(消法9条4項)。課税事業者選択届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その事業者がその提出をした日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間については消費税の納税義務は免除されない(消法9条4項)。
課税事業者選択届出書の提出をした日の属する課税期間が以下のいずれかに該当する場合、その提出をした日の属する課税期間から消費税の納税義務は免除されない(消法9条4項、法令20条)。
- 事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間
- 個人事業者が相続により課税事業者選択届出書を提出していた被相続人の事業を承継した場合におけるその相続があった日の属する課税期間
- 法人が吸収合併により課税事業者選択届出書を提出していた被合併法人の事業を承継した場合におけるその合併があった日の属する課税期間
- 法人が吸収分割により課税事業者選択届出書を提出していた分割法人の事業を承継した場合におけるその吸収分割があった日の属する課税期間
法人の場合、「事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」とは原則としてその法人の設立の日の属する課税期間をいうが、以下のような課税期間も含まれる(消基通1-4-7)。
- 非課税資産の譲渡等に該当する社会福祉事業のみを行っていた法人が新たに国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した課税期間
- 国外取引のみを行っていた法人が新たに国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した課税期間
- 設立の日の属する課税期間においては設立登記を行ったのみで事業活動を行っていない法人が、その翌課税期間等において実質的に事業活動を開始した場合のその課税期間等
また「課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間」には、その課税期間開始の日の前日まで2年以上にわたって国内において行った課税資産の譲渡等又は課税仕入れ及び保税地域からの課税貨物の引取りがなかった事業者が課税資産の譲渡等に係る事業を再び開始した課税期間も含まれる(消基通1-4-8)。
2.課税事業者選択不適用届出書
(1)基本的内容
課税事業者選択届出書を提出した事業者は、課税事業者選択の適用を受けることをやめようとするとき、又は事業を廃止したときは、その旨を記載した課税事業者選択不適用届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない(消法9条5項)。
課税事業者選択不適用届出書の提出があったときは、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日以後は、課税事業者選択届出書は、その効力を失う(消法9条8項)。
(2)課税事業者選択不適用届出書の提出制限
①基本的な制限
課税事業者選択届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、課税事業者選択の効力が生じる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、課税事業者選択不適用届出書を提出することができない(消法9条6項)。
②調整対象固定資産の課税仕入等を行った場合
課税事業者選択届出書を提出した事業者は、課税事業者選択の効力が生じる課税期間の初日から同日以後2年を経過する日までの間に開始した各課税期間で原則課税が適用される課税期間中に国内における調整対象固定資産の課税仕入れ等を行った場合には、事業を廃止した場合を除き、その調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、課税事業者選択不適用届出書を提出することができない(消法9条7項前段)。