1.小規模事業者に係る消費税の納税義務の免除の基礎
(1)基本的な内容
事業者は、原則として国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税の納税義務を負う(消法5条1項)。ただし、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税の納税義務が免除される(消法9条1項)。
(2)基準期間の意義
基準期間は個人事業者と法人で異なる。個人事業者の場合、基準期間とはその年の前々年をいう(消法2条1項14号)。法人の場合、基準期間とは原則としてその事業年度の前々事業年度をいう(消法2条1項14号)。ただし前々事業年度が1年未満である場合、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間が基準期間となる(消法2条1項14号かっこ書き)。
(3)基準期間における課税売上高の計算方法
基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として消費税の納税義務が免除される。基準期間における課税売上高の計算方法も個人事業者と法人で若干異なる。個人事業者の場合、基準期間における課税売上高は「基準期間中に『国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額』から『売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額』を控除した残額」である(消法9条2項1号)。法人の場合も原則として基準期間における課税売上高は「基準期間中に『国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額』から『売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額』を控除した残額」である(消法9条2項1号)。ただし基準期間が1年でない場合、「基準期間中に『国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額』から『売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額』を控除した残額をその法人のその基準期間に含まれる事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額」が基準期間における課税売上高となる(消法9条2項2号)。月数は、暦に従って計算し、1月に満たない端数を生じたときは、これを1月とする(消法9条3項)。
基準期間において免税事業者の場合、基準期間における課税売上高は税込で算定する(消基通1-4-5)。
(4)基準期間がない場合
法人の場合、設立後1期と2期では基準期間である前々事業年度がない。基準期間がない場合、原則として納税義務が免除される(消基通1-4-6)。
2.小規模事業者に係る消費税の納税義務の免除の特例
基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合、原則として消費税の納税義務が免除される。ただし例外もある。例えば適格請求書発行事業者は課税売上高が1,000万円以下であっても消費税納税義務は免除されない(消法9条1項かっこ書き)。以下のような場合、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても消費税納税義務は免除されない。
- 適格請求書発行事業者である場合
- 課税事業者選択届出書を提出した場合
- 前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 相続があった場合の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 合併があった場合の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 分割等があった場合の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 新設法人の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 特定新規設立法人の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合
- 高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例の適用を受ける場合