償却超過額がある場合の適格合併の税務仕訳等

1.前提

・適格合併に該当する合併を行う。
・被合併法人の会計上のBSは以下とする。

諸資産100,000諸負債60,000
資本金20,000
利益剰余金20,000

・被合併法人の償却超過額が5,000ある。
・適格合併に伴い合併法人は資本金を15,000増加させる。
・合併法人は抱合株式は保有しない。

2.税務仕訳

(1)税務仕訳

諸資産100,000
償却超過額5,000
諸負債60,000
資本金等の額15,000
資本金等の額5,000
利益積立金額25,000

(2)移転を受ける資産負債の取得価額

内国法人が適格合併により被合併法人から資産又は負債の移転を受けた場合には、移転を受けた資産及び負債の帳簿価額による引継ぎを受けたものとされる(法令123条の3第3項)。帳簿価額は税務上の帳簿価額であるため、償却超過額を含めて資産負債を簿価で引き継ぐ。上記仕訳の①から③がこれに該当する。

(3)資本金等の額の増加

合併により15,000資本金が増加するため、法人税法施行令8条1項本文に基づき資本金等の額が15,000増加する。これが上記仕訳の④である。

また資本金等の額は移転資産負債の純資産価額から合併による増加資本金額等を控除した金額だけ増加する(法令8条1項5号)。移転資産負債の純資産価額は被合併法人の資本金等の額20,000である(法令8条1項5号ロ)。また資本金が15,000増加しているため、増加資本金額等は15,000である。従って法人税法施行令8条1項5号に基づき資本金等の額が5,000増加する(20,000 – 15,000)。これが上記仕訳の⑤である。

(4)利益積立金額の増加

利益積立金額は、「①被合併法人から移転を受けた資産の適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の帳簿価額」から「『②その適格合併により被合併法人から移転を受けた負債のその事業年度終了の時の帳簿価額』並びに『③被合併法人の資本金等の額』及び『④抱合株式の適格合併の直前の帳簿価額』の合計額」を減算した金額だけ増加する。この場合、利益積立金額は25,000増加する(各数値は以下のとおりである)。

105,000
60,000
20,000
0

これが上記仕訳の⑥である。

3.合併法人における償却超過額の取扱い

償却超過額がある場合であっても、合併法人は通常会計上の簿価で受け入れることが多いと思われる。その場合、差額は償却費として損金経理した金額とみなされる(法法31条5項、法令61条の3第1号)。そのため合併法人においても結果的に償却超過額として扱われ、償却不足が生じた事業年度に損金の額に算入される。