1.概要
投資事業有限責任組合は法人格を有しないため、組合自体には課税されず、組合事業による損益は組合員に直接帰属し、組合員において課税される。
2.組合事業による損益の帰属
(1)基本的内容
投資事業有限責任組合は法人格を有しないため、組合事業による損益は各組合員の分配割合に応じ各組合員に直接帰属する(法基通14-1-1、所基通36・37共-19)
(2)損益の帰属時期
原則として損益の発生時点で組合員に帰属する(法基通14-1-1の2本文、所基通36・37共-19の2本文)。利益の分配とは関係がない。利益の分配がなくても損益は組合員に帰属する。
損益の帰属時期には例外もある。組合員が法人である場合、組合事業に係る損益を毎年1回以上一定の時期において計算し、かつ、組合員への個々の損益の帰属がその損益発生後1年以内であるときは、組合事業による損益は、その組合事業の計算期間を基として計算し、計算期間の終了の日の属する組合員の事業年度の益金の額又は損金の額に算入することができる(法基通14-1-1の2但書)組合員が個人の場合も同様の例外がある。個人の場合、組合事業による損益の計算期間の終了の日の属する年分の各種所得の計算上総収入金額又は必要経費に算入する(所基通36・37共-19の2但書)。
例えば組合に係る損益の計算時期が12月末であり、法人である組合員Aの決算期が3月とする。組合事業からは月100の利益が出るものとする。組合事業をX1年1月1日から開始し、X1年12月31日に終了したものとする。原則を適用する場合、組合員AのX1年3月期では組合事業による損益として3か月分の利益300を計上し、X2年3月期に9か月分の利益900を計上することになる。例外を適用する場合、組合の計算期間の終了日であるX1年12月31日の属するX2年3月期の申告で1年分の利益1,200を計上することができる。
(3)組合員による損益の取込方法
組合員が組合事業による損益を取り込む場合、その組合事業の収入金額、支出金額だけでなく、資産、負債等もその分配割合に応じて取り込まなければならない(法基通14-1-2本文、所基通36・37共-20本文)。この方法を総額法という。総額法が原則であるが、中間法及び純額法も認められている(法基通14-1-2但書、所基通36・37共-20但書)。
中間法とは組合事業の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法をいう(法基通14-1-2(2)前段、所基通36・37共-20(2)前段)。中間法では収入金額並びに原価及び費用のみ取込み、資産、負債等を認識しない。
純額法とは組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法をいう(法基通14-1-2(3)前段、所基通36・37共-20(3)前段)。純額法では資産、負債等に加え、収益金額等も認識せず、ただ利益又は損失のみ計上する。
(4)損益の取込方法による税務上の規定の取扱い
①基本的な内容
損益の取込方法によって受けられる法人税又は所得税の規定が異なる。総額法は特段制限はないが、中間法及び純額法では受けられない税務上の規定がある。
②中間法
組合員が法人の場合、組合事業の取引等について受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない(法基通14-1-2(2)後段)。
組合員が個人の場合、組合事業に係る取引等について非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない(所基通36・37共-20(2)後段)。
③純額法
組合員が法人の場合、組合事業の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない(法基通14-1-2(3)後段)。
組合員が個人の場合、組合事業に係る取引等について、非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はない(所基通36・37共-20(3)後段)。
(5)表によるまとめ
以下の表にまとめた。
総額法 | 中間法 | 純額法 | ||
取込方法 | 組合事業の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法 | 組合事業の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法 | 組合事業について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法 | |
適用できない規定 | 法人の場合 | 制限なし | 受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。 | 受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。 |
個人の場合 | 非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない。 | 非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はない。 |
(6)組合から組合員への報告
組合員が組合事業による損益の取込を行うために、組合は組合事業による損益と各組合員への帰属額を組合員に報告する必要がある。組合から組合員への報告に関しては税務上特段の規定がないため、組合契約等に基づき任意の時期に任意の形式により行う。LPS法では無限責任組合員は、毎事業年度経過後3月以内に、その事業年度の財務諸表等を作成しなければならないとされている(LPS法8条1項)。これにあわせていることが多いと思われる。
3.組合事業による損失の取込制限
(1)意義
過去組合事業で赤字を作り、課税の繰延をすることが行われたため、組合事業による損失の取込に制限が設けられた。組合員が法人の場合も個人の場合も、簡単に言えば業務の執行に関与しない組合員による損失の取込が制限された。法人の場合、取り込まれなかった損失は利益が出たときに損金の額に算入することができるが、個人の場合、そのような規定はない。
(2)組合員が法人である場合(法人税)
①損失発生時
法人が特定組合員に該当する場合で、かつ、以下のいずれかに該当する場合、その法人のその事業年度の組合等損失超過額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されない(措法67条の12第1項)。
- その組合契約に係る組合事業につきその債務を弁済する責任の限度が実質的に組合財産の価額とされている場合(措法67条の12第1項)
- 組合事業に係る債務の額のうちに占める責任限定特約債務の額の割合、組合事業の形態、組合財産の種類、組合債務の弁済に関する契約の内容その他の状況からみて、組合債務を弁済する責任が実質的に組合財産となるべき資産に限定され、又はその価額が限度とされていると認められる場合(措令39条の31第3項1号)
- 組合事業について損失が生じた場合にこれを補填することを約し、又は一定額の収益が得られなかった場合にこれを補足することを約する契約その他これに類する契約が締結され、かつ、その損失補填等契約が履行される場合には、その組合事業による累積損失額がおおむね出資金合計額以下の金額となり、又は累積損失額がなくなると見込まれるとき(措令39条の31第3項2号)
- その組合員が組合債務を直接に負担するものでない場合(措令39条の31第3項3号)
- その組合員に係る組合契約又は損益分配割合の定めの内容、組合債務の額のうちに占める責任限定特約債務の額の割合、組合事業の形態、その組合員に帰せられる組合財産の種類、組合債務の弁済に関する契約の内容その他の状況からみて、その組合員が組合債務を弁済する責任が実質的にその組合員に帰せられる組合財産となるべき資産に限定され、又はその価額が限度とされていると認められる場合(措令39条の31第3項4号)
- その組合員につき、組合事業に係る損失補填等契約が締結され、かつ、その損失補填等契約が履行される場合には、その組合員のその組合事業による組合員累積損失額がおおむね出資金額以下の金額となり、又はその組合員累積損失額がなくなると見込まれるとき(措令39条の31第3項5号)
- 上記に準ずる場合(措令39条の31第3項6号)
この規定の対象となる特定組合員とは、組合員のうち「『以下の組合員』以外のもの」をいう。
- 組合事業に係る重要な財産の処分若しくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、当該重要業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員(措法67条の12第1項、措令39条の31第2項1号)
- その組合員の全てが組合契約が効力を生ずる時から組合契約に定める計算期間で既に終了したもののうち最も新しいものの終了の時まで組合事業と同種の事業を主要な事業として営んでいる場合におけるこれらの組合員(措法67条の12第1項、措令39条の31第2項2号)
組合事業による損失を組合等損失額という。組合等損失額とは厳密には法人の組合事業による組合等損金額がその組合事業による組合等益金額を超える場合のその超える部分の金額をいう(措法67条の12第1項、措令39条の31第4項)。組合等損金額とは法人税法の一定の規定を適用しないで計算した所得の金額の計算上損金の額に算入される金額のうちその組合事業に帰せられる部分の金額をいう(措令39条の31第4項)。組合等益金額とは組合等損金額とは法人税法の一定の規定を適用しないで計算した所得の金額の計算上益金の額に算入される金額のうちその組合事業に帰せられる部分の金額をいう(措令39条の31第4項)。原則としてこの組合等損失額が全額損金の額に算入されないのではなく、組合等損失額のうち出資の価額等を超える部分の金額が損金の額に算入することができない。例外的に組合事業の最終的な損益の見込みが実質的に欠損となっていない場合において、その組合事業の形態、組合債務又は信託債務の弁済に関する契約、損失補填等契約その他の契約の内容その他の状況からみて、その組合事業に帰せられる損益が明らかに欠損とならないと見込まれるときは、組合等損失額が損金の額に算入に算入できなくなる(措法67条の12第1項かっこ書き、措令39条の31第7項、組合等損失額が組合等損失超過額となるため)。
組合等損失超過額とは組合等損失額のうち原則としてその法人のその事業年度の組合等損失額のうちその法人のその組合事業に係る出資の価額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額に相当する金額をいう(措法67条の12第1項)。計算方法は租税特別措置法施行令39条の31第5項に定められている。
②損金の額に算入されなかった損失発生後に利益が報じた場合
損金の額に算入されなかった組合事業による損失が生じた後に、その組合事業による利益が生じた場合、一定の金額を損金の額に算入することができる。
確定申告書等を提出する法人が、各事業年度において組合等損失超過合計額を有する場合には、組合等損失超過合計額のうちその事業年度のその法人の組合事業による利益の額として政令で定める金額に達するまでの金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(措法67条の12第2項)。
(3)組合員が個人である場合(所得税)
個人が組合事業から生ずる不動産所得を有する場合において、その個人の組合員が特定組合員に該当するときは、その年分の不動産所得の金額の計算上その組合事業による不動産所得の損失の金額として一定の金額は生じなかったものとみなされる(措法41条の4の2第1項)。この規定の対象となるのは不動産所得のみであるため、組合事業による所得が配当所得や株式等に係る譲渡所得に該当する場合は適用されない。またこの規定の対象となる特定組合員とは、「『組合事業に係る重要な財産の処分若しくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、その業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員』以外の組合員」をいう(措法41条の4の2第1項)。
この規定の適用を受ける場合、組合事業による損失の金額が生じなかったものとみなされるため、他に不動産所得があってもその不動産所得から組合事業による不動産所得の損失の金額を控除することはできない。生じなかったものとみなされる損失の金額は、その組合員のその年分における組合事業から生ずる不動産所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額がその組合事業から生ずる不動産所得に係る必要経費に算入すべき金額の合計額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額である(措令26条の6の2第4項)。
法人と異なり、なかったものとみなされた損失の額を利益が生じたときに経費に算入することはできない(経費に算入する規定がない)。
4.その他組合側の税務
(1)利益の分配に係る源泉徴収
投資事業有限責任組合が金銭等により利益の分配をする場合において、組合員が居住者又は内国法人であるときは源泉徴収は要しない(源泉徴収義務を定めた規定がない)。
それに対して組合員が非居住者又は外国法人であるときは原則として源泉徴収をしなければならない。投資事業有限責任組合契約に基づいて恒久的施設を通じて行う事業に係る収入からその収入に係る費用を控除したものについてその組合員がその組合契約に基づいて配分を受ける利益は国内源泉所得に該当する(所法161条1項4号、所令281条の2第1項1号、2項)。この利益を非居住者又は外国法人に対して分配する場合、20.42%の源泉徴収を行わなければならない(所法212条1項、213条1項1号等)。
(2)税務署への報告(法定調書)
投資事業有限責任組合の業務を執行する無限責任組合員は、その投資事業有限責任組合に係る各組合員に生ずる利益の額又は損失の額につき、投資事業有限責任組合に係る組合員所得に関する計算書を、その計算期間の終了の日の属する年の翌年1月31日又はその計算期間の終了の日の翌日から2ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までに、税務署長に提出しなければならない(所法227条の2、所令353条の2)。
3.組合員の税務
(1)組合員が法人の場合
①受取配当等の益金不算入と源泉所得税の税額控除
投資事業有限責任組合の基本的な業務は株式への投資である。株式への投資の場合、投資先の企業から配当を受けることがある。組合員が法人の場合、その配当につき受取配当等の益金不算入の適用を受けることができる。この規定を受けることで配当のうち一定金額を益金に算入しないことができ、税負担を軽減することができる。
また配当の支払いの際、通常所得税の源泉徴収がなされる。この源泉徴収された所得税についても、所得税額の控除の適用を受けることができる。この規定の適用を受けることで源泉徴収された所得税額を法人税額から控除することができ、単に源泉徴収された所得税を損金算入した場合よりも税負担を軽減することができる。
純額法の場合、これらの規定は適用できないため、税務上は総額法又は中間法の方が有利である。
②明細書の添付
法人が各事業年度終了の時において特定組合員に該当する場合には、その法人は、確定申告書にその組合事業に係る組合等損失額等の計算に関する明細書を添付しなければならない(措令39条の31第17項)。
(2)組合員が個人の場合
①所得区分
組合員が個人の場合、組合事業による所得がどの所得に該当するかによって課税関係が異なる。組合事業の内容によってどの所得に該当するか変わるが、組合事業の内容が株式投資であれば、配当所得や株式等に係る譲渡所得等に該当することが多いと考える。
所得の区分に関しては経済産業省が国税庁に対し事前照会を行い、国税庁が文書によって回答している(文書回答事例「投資事業有限責任組合及び民法上の任意組合を通じた株式等への投資に係る所得税の取扱いについて」)。この回答では以下の要件をすべて満たす場合、投資事業有限責任組合の組合事業による所得は株式等に係る雑所得又は事業所得として差し支えないとされている。
- 株式等への投資を主たる目的事業としていること
- 各組合員において収益の区分把握が可能であること
- 民法上の任意組合が前提とする共同事業性が担保されていること
- 投資組合が営利目的で組成されていること
- 投資対象が単一銘柄に限定されないこと
- 投資組合の存続期間が概ね5年以上であること
譲渡所得では基本的に株式の取得に要した費用と株式の譲渡に直接要した費用しか控除することができない。組合事業に係る経費は譲渡に直接要した費用でないことが多いと考えられ、所得の計算上通常控除できないと考えられる。それに対し雑所得又は事業所得の場合、事業に要した費用も所得の計算上控除できるため、組合事業に係る経費も控除することができる。上記の文章回答事例でも経済産業省は雑所得又は事業所得に該当する場合、組合に係る経費が所得の計算上控除できるか事前照会し、国税庁は一般的にはその解釈で差し支えないと回答している。
③明細書の添付
その年において組合事業から生ずる不動産所得を有する個人が確定申告書を提出する場合には、その組合事業から生ずる不動産所得の金額の計算に関する明細書をその申告書に添付しなければならない(措置令26条の6の2第6項)。この規定も不動産所得のみが対象であるため、組合事業による所得が配当所得等に該当する場合は添付は不要である。
4.消費税
(1)基本的な取扱い
投資事業有限責任組合の組合事業に属する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、各組合員がその組合事業の持分の割合又は利益の分配割合に対応する部分につき、それぞれ資産の譲渡等又は課税仕入れ等を行ったとされる(消基通1-3-1)。組合自体では消費税の課税関係は生じず、各組合員ごとに持分に応じ組合事業に係る課税売上等を認識し、他の取引と合わせ消費税の申告をすることとなる。
(2)資産の譲渡等の時期
各組合員が行ったこととされる資産の譲渡等については、原則として、組合事業として資産の譲渡等を行った時に各組合員が資産の譲渡等を行ったものとされる(消基通9-1-28本文)。ただし組合事業の計算期間が1年以内の場合、資産の譲渡等の時期を、共同事業の計算期間の終了する日の属する自己の課税期間において行ったものとすることができる(消基通9-1-28但書)。実務ではこちらを適用することが多いと考えられる。
(3)インボイス制度
①インボイス制度とは
2023年10月以降、消費税において仕入税額控除をするにはインボイスが必要となり、インボイス制度への対応が必要となった。インボイス制度への対応としては売手としての対応と買手としての対応がある。
②売手としての対応
売手としては主に買手の仕入れ税額控除のためにインボイスの発行が問題となる。
インボイスは適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者でなければ発行できない。消費税法上事業者とは個人事業者又は法人のことをいう(消法2条1項4号)。投資事業有限責任組合は個人事業者でも法人でもなく事業者に該当しないため、適格請求書発行事業者の登録を受けることができず、組合としてはインボイスを発行することができない。また組合員が適格請求書発行事業者であったとしても、その組合員は原則として組合事業として行った課税資産の譲渡等につきインボイスを発行することができない(消法57条の6第1項本文)。
各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する(LPS法16条、民法668条)。そのため共有資産の譲渡等と同じように、組合員ごとその持ち分に応じたインボイスを発行することが原則である考える。ただし組合員のすべてが適格請求書発行事業者である場合には、届出をすることで、例外的に組合事業としてインボイスを発行することができるようにすることができる(消法57条の6第1項但書)。
ただ投資事業有限責任組合の事業内容は株式投資であることが多いと考えられる。株式投資については消費税の課税の対象外となる取引や非課税の取引が多く、インボイス以前に買手側で仕入税額控除できる取引が少ない。そのためインボイス制度に対応せずとも買手が困る事態は少なく、売手としての対応する必要性は低いと思われる。
③買手としての対応
組合事業として行った課税仕入につき、各組合員において仕入税額控除をするには、原則として各組合員の持分に応じたインボイスの交付を受け、各組合員でそれを保存することが必要である。ただ事務手続きが煩雑になるため、インボイスが一の組合員のみに交付され、他の組合員が交付を受けることができない場合、インボイスの交付を受けた組合員が他の組合員にインボイスのコピーと他の組合員の仕入税額控除に必要な事項を記載した明細書等を交付し、他の組合員がそれらを保存することにより仕入税額控除することができる(消基通11-6-2本文)。また組合員が多数であることによりインボイスの写しの作成が大量となり、その写しを交付することが困難である場合、インボイスの交付を受けた組合員がそのインボイスを保存し、かつ、他の組合員の課税仕入れが適格請求書発行事業者から受けたものかどうかを他の組合員が確認できるための措置を講じた上で、明細書等のみを交付した場合には、他の組合員がその明細書等を保存することにより、仕入税額控除することができる(消基通11-6-2なお書き)。