非適格合併の税務

Ⅰ.枠組み

組織再編成は事業のためのリソースを移転する行為の一種であるととらえた場合、以下の項目がポイントとなる。

  • 移転の対象
  • リソースの取得者
  • リソースの移転の対価の受領者

合併の場合、移転の対象は被合併法人である。これを合併法人が取得する。合併法人は無対価合併を除き、被合併法人の事業全体の対価を支払うが、その相手は被合併法人の株主等である。

移転の対象被合併法人
リソースの取得者合併法人
リソースの移転の対価の受領者被合併法人の株主等

Ⅱ.リソースの取得者の税務(合併法人の税務)

1.取得したリソースに関する論点

(1)移転を受けた資産負債の取得価額

非適格合併の場合、税務上の原則通り時価で取得したものとされる。

(2)適格組織再編等の場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入

適格組織再編では資産負債が簿価で移転するため、適格組織再編により含み損のある資産を所得がある法人に移転することにより節税を図ることができる。そのため適格組織再編等を行った場合、含み損のある資産について譲渡等による損失額の損金算入が制限される場合がある。

この規定は基本的に適格組織再編に適用される。しかし非適格合併でもグループ法人税制の適用により譲渡損益が繰り延べられる場合はこの規定が適用される場合がある(法法62条の7第1項かっこ書き)。

損金算入の制限の内容は適格組織再編等で共通するため、別の項を参照。

(3)繰越欠損金の使用制限

適格組織再編では資産負債が簿価で移転するため、適格組織再編により含み益のある資産を繰越欠損金がある法人に移転することによりその含み益のある資産を譲渡することによる利益に対する課税を軽減することができる。そのため適格組織再編を行った場合、繰越欠損金の使用が制限される場合がある。

繰越欠損金の使用制限は基本的に適格組織再編に適用される。しかし非適格合併でもグループ法人税制の適用により譲渡損益が繰り延べられる場合はこの規定が適用される場合がある(法法57条4項かっこ書き)。

繰越欠損金の使用制限の内容は適格組織再編等で共通するため、別の項を参照。

2.資産調整勘定等

税務上は資産・負債を取得したものとされるが、個々の資産等の時価の総額と合併の対価の時価は必ずしも一致しない。差額は資産調整勘定等として処理される。

資産調整勘定との内容は組織再編で共通するため、別の項を参照。

3.リソースの移転対価の支払

合併法人はリソースの移転の対価を被合併法人の株主等に支払う。対価の種類としては以下のものが考えられる。

  • ① 合併法人等の株式
  • ② 金銭
  • ③ ①及び②以外の資産

①の場合、自己の株式を発行等する場合は当然資本金等の額が増加する(法令8条1項柱書)。

③の場合、時価で譲渡したものとされ譲渡損益が生じると考える。

4.株式の発行等によらない資本金等の額の増加額

(1)基本的な算式

資本金等の額に以下の算式により計算した金額が加算される(法令8条1項5号)。

合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額 – 当該合併による増加資本金額等 – 抱合株式の当該合併の直前の帳簿価額

(2)資産及び負債の純資産価額

資産及び負債の純資産価額とは原則として当該合併に係る被合併法人の株主等に交付した当該法人の株式、金銭並びに当該株式及び金銭以外の資産並びに抱合株式に対して交付されたものとみなされるこれらの資産の価額の合計額をいう(法令8条1項5号イ)。条文上合併により移転を受けた資産及び負債の純資産額とされているが実際には合併の対価の金額である(移転を受けた資産及び負債の価額は合併の対価の金額と必ずしも一致しない)。

ただし無対価合併で被合併法人及び合併法人の株主等の全てについて、その者の当該被合併法人の保有割合と当該者の当該合併法人の保有割合が等しいものの場合、当該合併により移転を受けた資産の価額から当該合併により移転を受けた負債の価額を控除した金額が資本金等の額の計算上の資産及び負債の純資産価額とされる(法令8条1項5号ロ)。例外が適用される場合、以下の点に留意する。

  • 資産の価額には資産調整勘定の金額を含む
  • 負債の価額には負債調整勘定の金額を含む

(3)増加資本金額等

増加資本金額等とは以下の金額の合計額である(法令8条1項5号)。

  • ① 当該合併により増加した資本金の額又は出資金の額
    • 新設合併の場合は、その設立の時における資本金の額又は出資金の額
  • ② 当該合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額
    • 株主等に剰余金の配当等として交付した金銭その他の資産及び合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産は除外する

(4)具体例

合併の対価をすべて現金で支払う場合、資産及び負債の純資産価額はその現金の金額である。一方増加資本金額等も対価として支払う現金の金額となり、資産及び負債の純資産価額と増加資本金額等が同額となる。そのため資本金等の額は増減しない。

5.利益積立金額

非適格合併の場合、利益積立金額は増減しない。

6.繰越欠損金の引継ぎ

非適格合併の場合、繰越欠損金は引き継げない。

Ⅲ.リソースの移転対価の受領者の税務(被合併法人の株主等の税務)

1.有価証券の譲渡損益

(1)原則

被合併法人の株主等は被合併法人に対する支配権、つまり株式等の対価を合併法人から時価で受領するため、被合併法人の株式等に係る有価証券の譲渡損益が生じる。

なお非適格合併の場合、みなし配当が発生するため、譲渡対価の額からみなし配当の金額が控除されることに留意する必要がある。

(2)例外

金銭等不交付合併に該当する場合、例外的に譲渡対価の額は被合併法人の株式等の帳簿価額とされ、譲渡損益は生じない(61条の2第2項)。ここでいう金銭等不交付合併とは、被合併法人の株主等に以下のいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されなかった合併をいう(法法61条の2第2項かっこ書き、法令119条の7の2第1項、119条1項5号参照)。

  • 合併法人
  • 合併法人の親法人(合併の直前に当該合併に係る合併法人と当該合併法人以外の法人との間に当該法人による完全支配関係がある場合の当該法人)

ただし以下の事由により交付された金銭その他の資産があっても、金銭等不交付合併に該当する(法法61条の2第2項かっこ書き)。

  • 被合併法人の株主等に対する剰余金の配当等として交付される場合
  • 合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される場合

金銭等不交付合併に該当する場合、被合併法人の株主等は基本的に合併法人又は合併法人の親法人等の株式を取得する。その取得価額は被合併法人の株式の当該合併の直前の帳簿価額相当額にみなし配当の金額と当該株式の交付費用を加算した金額である(法令119条1項5号)。

2.みなし配当

非適格合併はみなし配当事由に該当する(法法24条1項1号)。従って合併の対価の価額の合計額が以下により計算した金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当とみなされる(法令23条1項1号)。

当該合併に係る被合併法人の当該合併の日の前日の属する事業年度終了の時の資本金等の額 ÷ 当該被合併法人のその時の発行済株式等の総数又は総額 × 被合併法人の株主等が当該合併の直前に有していた当該被合併法人の株式又は出資の数又は金額

非適格合併が金銭等不交付合併に該当する場合のみなし配当の計算に関する特別の規定はないことを踏まえると、みなし配当計算時の対価の価額の合計額は被合併法人株式の帳簿価額相当額とされないのではないかと思われる。その一方法人税法61条の2第2項により「その有価証券の譲渡の時における有償によるその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額」は帳簿価額相当額とされるため、合併の対価の価額の合計額を被合併法人株式の帳簿価額相当額として計算するようにも思われる。金銭等不交付合併の場合は譲渡損益が繰り延べられることを踏まえると後者の方がしっくりするように感じる。

Ⅳ.その他論点

(1)被合併法人の税務

被合併法人の株主等から見ると合併の経済的実態は投資の清算と考えられる。言い換えれば被合併法人を清算し、その残余財産の交付を受けたものと考えられる。税務上もこのような考え方を踏まえ、被合併法人が合併により合併法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該合併の時の価額による譲渡をし、合併対価をその時の価額により取得し直ちに被合併法人の株主等に交付したものと擬制される(法法62条1項)。そして合併により合併法人に移転をした資産及び負債の当該移転による譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、当該合併に係る最後事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法法62条1項)。