1.株式移転完全子法人の株主の税務
(1)株式移転により取得した資産の取得価額
株式移転完全子法人の株主は株式移転の対価として株式移転完全親法人の株式を取得する。適格株式移転はその株式移転に係る株式移転完全子法人の株主にその株式移転に係る株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されなかった株式移転であるため、その取得価額は株式移転完全子法人の株式の株式移転の直前の帳簿価額相当額となる(法令119条1項11号)。
(2)株式交換完全子法人の株式の譲渡損益
株主移転完全子法人の株主は株式移転によりその有する株式移転完全子法人の株式を譲渡することとなる。そのため有価証券の譲渡損益が生じる。有価証券の譲渡損益は原則としてその有価証券の譲渡により通常得べき対価の額から原価の額を控除した金額である(法法61条の2第1項)。適格株式移転はその株式移転に係る株式移転完全子法人の株主にその株式移転に係る株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されなかった株式移転であるため、通常得べき対価の額は株式移転完全子法人株式の株式移転の直前の帳簿価額相当額とされ、譲渡損益は生じない(法法61条の2第11項)。
2.株式移転完全親法人の税務
(1)株式移転完全子法人の株式の取得価額
株式移転完全親法人は株式移転により株式移転完全子法人の株式を取得する。その取得価額は株式移転完全子法人の株主数により異なる。
適格株式移転の直前において株式移転完全子法人の株主の数が50人未満の場合、株式移転完全子法人株式の取得価額は株式移転完全子法人の株主が有していた株式移転完全子法人株式のその適格株式移転の直前の帳簿価額相当額の合計額となる(法令119条1項12号イ)。株式移転完全子法人の株主が50人以上の場合は、株式移転完全子法人のその適格株式移転の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額相当額が取得価額となる(法令119条1項12号ロ)。
(2)資本金等の額
株式移転完全親法人は株式移転により新株を発行するため、資本金が増加する。それに伴って資本金等の額も増加する(法令8条1項本文)。
これとは別に資本金等の額が株式移転により移転を受けた株式移転完全子法人の株式の取得価額からその株式移転による増加資本金額等を減算した金額増加する(法令8条1項11号)。
3.株式交換完全子法人の税務
(1)時価評価
適格株式交換の場合、時価評価の規定は適用されない。
(2)欠損等法人の欠損金の繰越の不適用
適格株式移転によって生じた支配関係は欠損等法人の欠損金の繰越の不適用の規定の特定支配関係から原則として除外されているため、適格株式移転によって支配関係が生じても欠損等法人の欠損金の繰越の不適用の規定は適用されない(法法57条の2第1項かっこ書き、法令113条の3第5項1号)。