1.概要
法人に対して課税される住民税のうち法人税割の課税標準は法人税額である(地法23条1項3号イ、292条1項3号イ)。また法人に対して課税される事業税のうち所得割の課税標準は各事業年度の所得であり、各事業年度の所得は基本的に法人税の計算の例により算定する(地法72条の12第3号、72条の23第1項1号)。グループ通算制度は法人税の所得に影響を与え、しいては税額に影響があるため、これらの地方税についてもグループ通算制度の影響を受けそうである。しかし地方税については法律の規定によりグループ通算制度の損益の通算と欠損金の通算の影響を受けない措置が取られている。
2.事業税
(1)所得割
事業税のうち所得割の課税標準は各事業年度の所得であり、各事業年度の所得は基本的に法人税の計算の例により算定する(地法72条の12第3号、72条の23第1項1号)。しかしグループ通算制度の損益の通算と欠損金の通算の規定については適用がないものとして計算することになっている(地法72条の23第2項)。
(2)付加価値割
付加価値割の計算時に単年度損益を算定するが、この単年度損益についてもグループ通算制度の損益の通算の規定が適用がないものとして計算するものとされている(地税72条の18第2項)。
なお単年度損益は欠損金を考慮せず計算される(地税72条の18第2項)。そのためグループ通算制度の欠損金の通算に関する特別の規定はないが、そもそもグループ通算制度の欠損金の通算の影響を受けない。
3.住民税
(1)概要
法人に対して課税される住民税のうち法人税割の課税標準は法人税額である(地法23条1項3号イ、292条1項3号イ)。グループ通算制度の損益の通算と欠損金の通算は所得段階の規定であるため、法人税割の課税標準である法人税額はグループ通算制度の影響を受けている。そのためその影響がないように調整がなされる。
調整項目は以下のとおりである。加算対象とあるものは課税標準である法人税額に加算され、控除対象とあるものは課税標準である法人税額から控除される。
グループ通算制度における処理 | 法人割における調整 | ||||
調整の名称 | 定義されている条文 | 地方税様式の別表番号 | |||
都道府県民税 | 市町村民税 | ||||
損益の通算が行われた場合 | 損金算入された場合 | 加算対象通算対象欠損調整額 | 地税53条12項 | 地税321条の8第12項 | 第6号様式別表1 |
益金算入された場合 | 控除対象通算対象所得調整額 | 地税53条14項 | 地税321条の8第14項 | 第6号様式別表2の3 | |
欠損金の通算が行われた場合 | 損金算入された場合 | 加算対象被配賦欠損調整額 | 地税53条18項 | 地税321条の8第18項 | 第6号様式別表1 |
益金算入された場合 | 控除対象配賦欠損調整額 | 地税53条20項 | 地税321条の8第20項 | 第6号様式別表2の4 | |
通算開始・加入等に当たり、欠損金が切り捨てられた場合 | 控除対象通算適用前欠損調整額 | 地税53条4項 | 地税321条の8第4項 | 第6号様式別表2 | |
法法57条第7項の規定により被合併法人の欠損金を引き継げなかった場合 | 控除対象合併等前欠損調整額 | 地税53条9項 | 地税321条の8第9項 | 第6号様式別表2の2 |