1.グループ通算制度における欠損金の種類等
(1)グループ通算制度における欠損金の種類
グループ通算制度において欠損金は以下の3つにわけることができる。
- グループ通算制度の開始等に伴い切捨てられる欠損金
- 特定欠損金
- 非特定欠損金
(2)特定欠損金額
以下の欠損金額を特定欠損金額という(法法64条の7第2項各号)。
- 時価評価除外法人に該当する通算法人の最初通算事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額
- 通算法人に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち損益通算の対象とならないもの
- 通算法人を合併法人とする適格合併が行われたこと又は通算法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で当該通算法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定したことに基因してこれらの通算法人の欠損金額とみなされた金額(残余財産が確定した場合等の青色欠損金額の引継ぎがあった場合)
(3)非特定欠損金額
通算法人の10年内事業年度において生じた欠損金額とされた金額のうち特定欠損金額以外の金額をいう(法法64条の7第1項3号ロ)。
2.グループ通算制度における欠損金の繰越控除
(1)概要
まず各通算法人ごとに特定欠損金を控除し、次にグループ全体で非特定欠損金額を控除する。計算順序は法定されているわけではないが、非特定欠損金の繰越控除額の計算に特定欠損金の繰越控除額が必要となるため、この順序により計算する。
(2)損金算入限度額
通常の欠損金と同様に損金算入限度額の適用がある。特定欠損金の繰越控除、非特定欠損金の繰越控除を行うごとに計算が必要となる。
(3)特定欠損金の繰越控除
以下の算式により計算した金額が、特定欠損金の損金算入限度額となる(法法64条の7第1項3号イ)。
①その通算法人のその10年内事業年度の特定欠損金額×②各通算法人の損金算入限度額の合計額÷③各通算法人のその10年内事業年度の特定欠損金額の合計
特定損金算入限度額計算上の特定欠損金額は欠損控除前の所得金額が限度となる。②の金額が③の金額に占める割合が1を超える場合は1として計算する(法法64条の7第1項3号イかっこ書き)。
また③の金額が0の場合、特定損金算入限度額は0となる(法法64条の7第1項3号イかっこ書き)。
(4)各通算法人の非特定欠損金額の計算及び調整
各通算法人の欠損金は生じなかったものとみなされる欠損金を除けば、特定欠損金と非特定欠損金に分かれる。非特定欠損金はグループ全体で共有され按分される。各通算法人に按分された非特定欠損金額を非特定欠損金配賦額という。
非特定欠損金配賦額は以下の算式により計算する。
①各通算法人のその10年内事業年度に係る特定欠損金額以外の欠損金額の合計額×②その通算法人の適用事業年度の損金算入限度額÷③各通算法人の適用事業年度に係る損金算入限度額の合計
②からは損金の額に算入される特定欠損金額を控除する。
通算法人ごとの非特定欠損金配賦額はその通算法人の非特定欠損金の合計額とは必ずしも一致しない。そのため調整が行われる。すなわち非特定欠損金配賦額が非特定欠損金よりも大きい通算法人の場合、差額はその通算法人の欠損金に加算される(法法64条の7第1項2号ハ)。小さい通算法人の場合、その差額は欠損金から控除される(法法64条の7第1項2号ニ)。この調整について国税庁のQ&Aでは「配賦」という表現が用いられており、「非特定欠損金配賦額」とあわせ「配賦」という表現が二つの意味で使われており、分かりにくいと考える。
(5)非特定欠損金の繰越控除
以下の算式により計算した金額が、特定欠損金の損金算入限度額となる(法法64条の7第1項3号ロ)。
①その通算法人のその10年内事業年度の非特定欠損金額×②各通算法人の適用事業年度に係る損金算入限度額の合計額÷③各通算法人のその10年内事業年度に係る特定欠損金額以外の欠損金額の合計額
②の金額からは損金の額に算入された特定欠損金額は除外される。