利益剰余金を原資とする現物分配の税務

1.総論

現物分配とは一般に剰余金の配当として株主に対して金銭以外の資産を交付することをいう。しかし法人税で現物分配といった場合、法人がその株主等に対し当該法人の次に掲げる事由により金銭以外の資産の交付をすることをいう(法法2条12号の5の2)。

  • 剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、分割型分割によるものを除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるものを除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)
  • 解散による残余財産の分配
  • 自己の株式又は出資の取得
  • 出資の消却(取得した出資について行うものを除く。)、出資の払戻し、社員その他法人の出資者の退社又は脱退による持分の払戻しその他株式又は出資をその発行した法人が取得することなく消滅させること。
  • 組織変更(当該組織変更に際して当該組織変更をした法人の株式又は出資以外の資産を交付したものに限る。)
    剰余金の配当以外のものも現物分配に含まれるが、ここでは剰余金の配当のみを取り扱う。さらに剰余金の配当は利益剰余金を原資とするものと資本剰余金を原資とするものに分けられるが、ここでは利益剰余金を原資とするもののみを対象とする。

現物分配は適格現物分配とそうでないものに分けられる。適格現物分配とは内国法人を現物分配法人とする現物分配のうち、その現物分配により資産の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるものをいう(法法2条12号の5)。適格現物分配でない現物分配を法人税法上の用語ではないが一般的に非適格現物分配という。

現物分配によりその有する資産の移転を行った法人を現物分配法人といい、現物分配により現物分配法人から資産の移転を受けた法人を被現物分配法人という(法法2条12号の5の2、12号の5の3)。

2.非適格現物分配の場合

(1)現物分配法人

現物分配する資産は時価で譲渡したものとされる。そのため譲渡損益が計上される。

利益剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、利益積立金額が減少する。減少額は現物分配した資産の価額である(法令9条8号)。

(2)被現物分配法人

現物分配された資産は時価で取得したものとされる。

利益剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、受取配当等の益金不算入の規定が適用される(法法23条1項1号)。

3.適格現物分配の場合

(1)現物分配法人

現物分配する資産は簿価で譲渡したものとされる(法法62条の5第3項)。そのため譲渡損益は計上されない。

利益剰余金を原資とする剰余金の配当であるため、利益積立金額が減少する。減少額は現物分配した資産の交付直前の帳簿価額である(法令9条8号)。

(2)被現物分配法人

現物分配法人における現物分配直前の帳簿価額が現物分配された資産の取得価額となる(法令123条の6第1項)。

利益剰余金を原資とする剰余金の配当であるが、適格現物分配であるため受取配当等の益金不算入の規定は適用されない(法法23条1項かっこ書き)。ただ内国法人が適格現物分配により資産の移転を受けたことにより生ずる収益の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない旨の規定が定められており、課税は発生しない(法法62条の5第4項)。税務上は収益が発生しないため、代わりに利益積立金額に現物分配された資産の当該現物分配の直前の帳簿価額に相当する金額が加算される(法令9条4号)。