投資事業有限責任組合による利益の分配時の源泉徴収

1.組合員が居住者又は内国法人の場合

投資事業有限責任組合は法人ではなく、組合事業による損益はそのまま組合員に帰属する。そのため投資事業有限責任組合が居住者又は内国法人に利益の分配をしても源泉徴収が必要な配当所得等に該当せず、源泉徴収は不要である。

ただし源泉徴収をされているように見える場合がある。投資事業有限責任組合の運用財産は株式等に限られている。株式等から配当等の分配を受けるときは、通常その株式等を発行する会社等から源泉徴収がなされる。その源泉徴収税額は組合員に帰属することとなる。例えば株式を発行する非上場会社から配当1,000,000を受け、その際204,200円源泉徴収されたものとする。投資事業有限責任組合はその非上場会社から源泉徴収後の795,800円の支払を受ける。組合員は法人AとBの2社であったとし、その795,800円を平等に分配されるものとする。この場合、法人Aは500,000円の収益を認識し、費用として102,100円認識する。この費用102,100円は源泉所得税であり、所得税額控除の対象となる。このように投資事業有限責任組合による利益の分配時に源泉徴収がされているように見えることがある。

2.組合員が非居住者又は外国法人の場合

非居住者又は外国法人の投資事業有限責任組合に関する基本的な課税関係は居住者又は内国法人と同様であるが、組合事業による利益は国内源泉所得に該当する(所法161条1項4号、所令281条の2第1項1号)。非居住者又は外国法人に組合事業による利益の分配をする者は、その支払の際源泉徴収し、その徴収日の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない(所法212条1項)。

この場合の源泉徴収税率は20%、復興特別所得税を併せて20.42%である(所法213条1項1号)。