1.繰延資産の定義等
(1)繰延資産の定義
法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもので次に掲げるものをいう(法法2条24号、法令14条1項)。
- ①創立費
- ②開業費
- ③開発費
- ④株式交付費
- ⑤社債等発行費
- ⑥次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの
- イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
- ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
- ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
- ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
- ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
(2)繰延資産と前払費用の違い
繰延資産と似たものに前払費用がある。前払費用とは支出はしているもののまだ役務の提供を受けていないものをいう。それに対して繰延資産は役務の提供を受けているが、その効果が1年以上に及ぶものをいう。役務の提供を受けているという点で繰延資産と前払費用は異なる。前払費用は繰延資産から除外されている(法令14条1項かっこ書き)。
2.繰延資産の税務
(1)償却費の損金算入
繰延資産の償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額に達するまでの金額を損金の額に算入することができる(法法32条1項)。
(2)償却限度額
会計上の繰延資産はその繰延資産につき既に損金の額に算入された金額を除いた金額が償却限度額となる(任意償却、法令64条1項1号)。税務上の繰延資産は次の算式により計算した金額が償却限度額となる(均等償却、法令64条1項2号)。
その繰延資産の額÷その繰延資産となる費用の支出の効果の及ぶ期間の月数×その事業年度の月数(その事業年度がその繰延資産となる費用の支出をする日の属する事業年度である場合、同日からその事業年度終了の日までの期間の月数)
(3)償却超過額
償却超過額がある場合には、その繰延資産については、その繰延資産の帳簿価額は償却超過額相当額の減額がされなかったものとみなされる(法令65条)。また償却超過額は繰延資産の償却費として損金経理をした金額に含まれる(法法32条6項)。そのため償却費として損金経理をした金額が償却限度額に満たない事業年度においてその満たない部分の金額に達するまでの金額がその事業年度の損金の額に算入されることとなる。
(4)少額の繰延資産
税務上の繰延資産に該当する費用を支出する場合において、その費用のうちその支出する金額が20万円未満であるものについては、その支出する日の属する事業年度において全額損金経理をすることによって、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができる(法令134条)。