グループ通算制度 離脱時の時価評価

1.概要

通算法人がグループ通算制度から離脱する場合において、一定の要件に該当するときは、条文上原則として、時価評価を行い、評価損益を計上しなければならない。ただ後述するように資産の評価益が評価損よりも大きい場合、この規定は適用されない。そのためこの離脱時の時価評価の規定の適用を受ける場合は基本的には評価損を計上する場合である。この規定は含み損の二重計上を防止するために定められている。含み損は株式の価格に影響を与え、離脱法人の株式の売却時にその離脱法人の株式を保有している通算法人において譲渡損が生じる。そしてグループ通算制度離脱後に離脱した法人においてその含み損を実現させることにより、二重で損失を計上できてしまう。これを防ぐため、離脱時の時価評価の規定が定められた。

2.離脱時に時価評価が必要な場合

(1)原則

離脱法人が次に掲げる要件のいずれかに該当する場合には、原則として、離脱法人の通算終了直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、その通算終了直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法法64条の13第1項)。

  • ①離脱法人の通算終了直前事業年度終了の時前に行う主要な事業が離脱後引き続き行われることが見込まれていないこと
  • ②離脱法人の株式又は出資を有する他の通算法人において通算終了直前事業年度終了の時後に離脱法人の株式又は出資の譲渡又は評価換えによる損失の額として政令で定める金額が生ずることが見込まれていること

(2)例外

①資産につき評価益が生じる場合

離脱法人が通算終了直前事業年度終了の時に有する資産の評価益の額の合計額が評価損の額の合計額以上である場合、時価評価は不要である(法法64条の13第1項1号かっこ書き、2号かっこ書き、法令131条の17第2項)。

②初年度離脱通算子法人である場合

初年度離脱通算子法人である場合、時価評価は不要である(法法64条の13第1項かっこ書き、法令131条の17第1項)。

3.離脱時に時価評価を行う場合の対象資産

時価評価が必要な場合の①又は②に該当するかにより、時価評価の対象となる資産が以下の通り異なる。

①に該当することより時価評価する場合帳簿価額が1,000万円以上の固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産(法法64条の13第1項1号、法令131条の17第3項)
②に該当することにより時価評価する場合帳簿価額が10億円を超える固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産のうちその時後に譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の政令で定める事由が生ずるが見込まれているもの(法法64条の13第1項2号)

4.損益の通算との関係

グループ通算制度から離脱する場合、通算終了直前事業年度終了の日と通算親法人の事業年度終了の日は通常異なるため、通常損益の通算はできない。