受取配当等の益金不算入

1.対象となる配当等の範囲

(1)配当等の範囲

以下の配当等が受取配当等の益金不算入の対象となる(法法23条1項各号)。

  • ①株式等に係る剰余金の配当(一定のものを除く)若しくは利益の配当(一定のものを除く。)又は出資に係る剰余金の分配
  • ②投資法人の金銭の分配(出資等減少分配を除く。)
  • ③特定目的会社の取締役の決定による中間配当

投資信託の収益の分配は原則として受取配当等の益金不算入の対象とならない。例外的に特定株式投資信託の収益の分配は受取配当等の益金不算入の対象となる(措法67条の6第1項)。

(2)短期保有株式の配当等の特例

配当等の元本である株式等が短期保有株式に該当する場合、短期保有株式に対応する配当等については受取配当等の益金不算入の規定は適用されない(法法23条2項)。

2.受取配当等の益金不算入額

(1)益金不算入額

①概要

内国法人が次の配当等の額を受けるときはその株式等の区分に応じそれぞれに掲げる金額の合計額は、益金に算入しない(法法23条1項)。

完全子法人株式等に係る配当等その配当等の額
関連法人株式等に係る配当等その配当等の額からその関連法人株式等に係る負債利子の額を控除した金額
その他の株式等に係る配当等その配当等の額の50%相当額
非支配目的株式等に係る配当等その配当等の額の20%相当額

②関連法人株式等に係る配当等の額から控除する金額

「関連法人株式等に係る配当等の額の4%相当額」又は「支払利子等の額の合計額の10%相当額」のいずれか少ない金額(法令19条1項、2項)

(2)完全子法人株式等の範囲

①基本

配当等の額の計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して配当等を受ける内国法人とその配当等をする他の内国法人との間に完全支配関係がある場合の当該他の内国法人の株式等(法令22条の2第1項)

②計算期間

<原則>

配当等の額の計算期間とは、原則として、その受ける配当等の額に係る配当等の前に最後に当該配当等をする他の内国法人によりされた配当等の基準日等の翌日からその受ける配当等の額に係る基準日等までの期間をいう(法令22条の2第2項)。

<前回の配当の基準日等が今回の配当の基準日等の1年以上前の場合>

その受ける配当等の額に係る配当等の前に最後に当該配当等をする他の内国法人によりされた配当等の基準日等の翌日がその受ける配当等の額に係る基準日等から起算して一年前の日以前の日である場合には、計算期間の始点は当該一年前の日の翌日となる。(法令22条の2第2項1号)。従って計算期間は1年以内となる。

<設立後初の配当である場合>

またその受ける配当等の額が当該一年前の日以前に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初にされる配当等に係るものである場合は、計算期間の始点は当該一年前の日の翌日となる(法令22条の2第2項1号)。その受ける配当等の額がその配当等の額に係る基準日等以前一年以内に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初にされる配当等に係るものである場合、計算期間の始点は当該設立の日となる(法令22条の2第2項2号)。

<配当等を支払う法人から取得した株式等である場合>

その受ける配当等の額がその配当等の額の元本である株式等を発行した他の内国法人から当該配当等の額に係る基準日等以前一年以内に取得したその元本である株式等につきその取得の日以後最初にされる配当等に係るものである場合、計算期間の始点は当該取得の日となる(法令22条の2第2項3号)。

(3)関連法人株式等の範囲

①基本

配当等を支払う他の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の三分の一を超える数又は金額の株式等を判定期間の初日からその受ける配当等の額に係る基準日等まで引き続き有している場合の当該他の内国法人の株式等をいう(法令22条1項)。

②判定期間の初日

<通常>

最後に当該他の内国法人によりされた配当等の基準日等の翌日がその受ける配当等の額に係る基準日等から起算して六月前の日以前の日である場合、その受ける配当等の額に係る基準日等から起算して6月前の日(法法22条1項1号)

<その受ける配当等の額が当該六月前の日以前に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初にされる配当等に係るものである場合>

その受ける配当等の額に係る基準日等から起算して6月前の日(法法22条1項1号)

<その受ける配当等の額がその配当等の額に係る基準日等以前六月以内に設立された他の内国法人からその設立の日以後最初にされる配当等に係るものである場合>

当該設立の日(法法22条1項2号)

<その受ける配当等の額がその配当等の額の元本である株式等を発行した他の内国法人から当該配当等の額に係る基準日等以前六月以内に取得したその元本である株式等につきその取得の日以後最初にされる配当等に係るものである場合>

当該取得の日(法法22条1項3号)

<その他の場合>

当該内国法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額に係る配当等の前に最後に当該他の内国法人によりされた配当等の基準日等の翌日(法法22条1項本文)

(4)非支配目的株式等の範囲

他の内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の100分の5以下に相当する数又は金額の当該他の内国法人の株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額に係る基準日等において有する場合の当該他の内国法人の株式等をいう(法令22条の3第1項)。

(5)みなし配当の場合の株式等の区分

完全子法人株式等効力発生日の前日において完全支配関係があるかどうかにより判定する(法令22条の2第1項)
関連法人株式等効力発生日の前日まで3分の1超有しているかどうかにより判定する(法令22条1項)
非支配目的株式等効力発生日の前日において5%以下かどうかにより判定する(法令22条の3第1項)

(6)留意点

出資割合が低い法人の株式は通常非支配目的株式等に該当する。