電気通信利用役務の提供に係る消費税

1.概要

電気通信利用役務の提供とは、基本的に資産の譲渡等のうち電気通信回線を介して行われる著作物その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供をいう。電気通信利用役務は内外判定とリバースチャージ方式という2点で他の役務の提供と異なる。

2.電気通信利用役務の提供の定義

電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち電気通信回線を介して行われる著作物その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供をいう。ただし他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供は除かれる(消法2条1項8号の3)。また電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供も除かれる(消法2条1項8号の3かっこ書き)。

以下のようなものが電気通信利用役務の提供とされる(消基通5-8-3)。

  • インターネットを介した電子書籍の配信
  • インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
  • インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
  • インターネットのウエブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
  • インターネットのウエブサイト上に広告を掲載する役務の提供
  • 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング

3.内外判定

電気通信利用役務の提供は役務の提供の一つの形式である。基本的に役務の提供が国内において行われたかどうかは原則として役務の提供が行われた場所で判断する(消法4条3項2号)。国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないものは役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地が国内であるかどうかにより判断する(消令6条2項6号)。しかし電気通信利用役務の提供に該当する場合、役務の提供を受ける者の住所等により内外判定を行う(消法4条3項3号)。

この内外判定の基準は後述する事業者向け電気通信利用役務の提供と消費者向け電気通信利用役務の提供の両方に適用される。

3.リバースチャージ方式

(1)リバースチャージ方式の対象

リバースチャージ方式の対象となる仕入れを消費税法上特定課税仕入れという。事業者は国内において行った特定課税仕入れにつき、消費税の納税義務を負う(消法5条1項)。特定課税仕入れに事業者向け電気通信利用役務の提供が含まれるため、事業者向け電気通信利用の提供を受けた場合、原則としてリバースチャージ方式の適用がある。

特定課税仕入れとは課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいい、特定仕入れとは事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう(消法5条1項かっこ書き、消法4条1項かっこ書き)。特定資産の譲渡等は事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう(消法2条1項8号の3)。消費者向け電気通信利用の提供は特定課税仕入れに含まれないため、リバースチャージ方式の適用はない。事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう(消法2条1項8号の4)。以下のようなものが事業者向け電気通信利用役務の提供とされる(消基通5-8-4)。

  • インターネットのウエブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなもの
  • 役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる電気通信利用役務の提供で、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの

なお特定課税仕入れには課税仕入に該当する特定役務の提供も含むため、特定役務の提供を受ける場合、リバースチャージ方式の対象に含まれる可能性がある。

また国内において他の者が行う特定課税仕入れに該当する特定資産の譲渡等を行う事業者は、その特定資産の譲渡等に際し、あらかじめ、当該特定課税仕入れを行う事業者がリバースチャージ方式により消費税を納める義務がある旨を表示しなければならない(消法62条)。ただし実効性があるかは不明である。

(2)リバースチャージ方式が適用される場合の消費税の計算

リバースチャージ方式が適用される場合、特定課税仕入れを行った事業者はその特定課税仕入れにつき納税義務を負う(消法5条1項)。特定課税仕入れに係る消費税の課税標準は特定課税仕入れに係る支払対価の額で、税率は10%である(消法28条2項、29条1号等)。

一方特定課税仕入れにつき消費税額控除をすることができる(消法30条1項)。全額仕入税額控除をすることができる場合、最終的にプラスマイナスがゼロである。それ以外の場合、消費税の負担が生じる。

(3)リバースチャージ方式に係る経過措置

以下の課税期間については、特定課税仕入はなかったものとみなされるため、リバースチャージ方式の適用はない。

  • 課税売上割合が95%以上である課税期間(平成27年改正法附則42条)
  • 簡易課税制度が適用される課税期間(平成27年改正法附則44条2項)
    ただしこの場合、仕入税額控除することはできない。

経過措置の適用期間は定められていないため、改正がない限り経過措置が適用され続ける。

(4)小規模事業者に係る納税義務の免除との関係

消費税の納税義務が免除される場合、特定課税仕入れに係る納税義務も免除される(消法9条1項)。

特定課税仕入は課税資産の譲渡等には含まれない(消法5条1項)。そのため免税事業者の判定の基礎となる基準期間における課税売上高には含まれない。

(5)電子通信利用役務の提供とインボイス

電子通信利用役務の提供のうち特定課税仕入に該当するもの(=リバースチャージ方式の対象となるもの)について、仕入税額控除をする場合、インボイスの保存は不要であり、帳簿のみの保存で仕入税額控除をすることができる(消法30条7項かっこ書き、消令49条1項2号)。

それに対して消費者向け電子通信利用役務の提供と消費者・事業者向け電子通信利用役務の提供については、仕入税額控除をする場合、原則通りインボイスと帳簿の保存が必要である(消法30条7項)。