Ⅰ.枠組み
組織再編成は事業のためのリソースを移転する行為の一種であるととらえた場合、以下の項目がポイントとなる。
- 移転の対象
- リソースの取得者
- リソースの移転の対価の受領者
合併の場合、移転の対象は被合併法人である。これを合併法人が取得する。合併法人は無対価合併を除き、被合併法人の事業全体の対価を支払うが、その相手は被合併法人の株主等である。
| 移転の対象 | 被合併法人 |
| リソースの取得者 | 合併法人 |
| リソースの移転の対価の受領者 | 被合併法人の株主等 |
Ⅱ.リソースの取得者の税務(合併法人の税務)
1.取得したリソースに関する論点
(1)移転を受けた資産負債の取得価額
適格合併の場合、被合併法人から移転を受けた資産負債は当該被合併法人の最後事業年度終了の時の帳簿価額により引継ぎを受けたものとされる(法令123条の3第3項)。
(2)適格組織再編等の場合の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
適格組織再編では資産負債が簿価で移転するため、適格組織再編により含み損のある資産を所得がある法人に移転することにより節税を図ることができる。そのため適格組織再編等を行った場合、含み損のある資産について譲渡等による損失額の損金算入が制限される場合がある。適格合併はこの規定の対象である。損金算入の制限の内容は適格組織再編等で共通するため、別の項を参照。
(3)繰越欠損金の使用制限
適格組織再編では資産負債が簿価で移転するため、適格組織再編により含み益のある資産を繰越欠損金がある法人に移転することによりその含み益のある資産を譲渡することによる利益に対する課税を軽減することができる。そのため適格組織再編を行った場合、繰越欠損金の使用が制限される場合がある。適格合併はこの規定の対象である。繰越欠損金の使用制限の内容は適格組織再編等で共通するため、別の項を参照。
2.資産調整勘定等
適格合併では資産調整勘定等は生じない。
3.リソースの移転対価の支払
合併法人はリソースの移転の対価を被合併法人の株主等に支払う。対価の種類としては以下のものが考えられる。
- ① 合併法人等の株式
- ② 金銭
- ③ ①及び②以外の資産
適格合併は金銭等不交付要件を満たすため、①が対価となる。自己の株式を発行等する場合は当然資本金等の額が増加する(法令8条1項柱書)。
4.株式の発行等によらない資本金等の額の増加額
(1)基本的な算式
資本金等の額に以下の算式により計算した金額が加算される(法令8条1項5号)。
合併により移転を受けた資産及び負債の純資産価額 – 当該合併による増加資本金額等 – 抱合株式の当該合併の直前の帳簿価額
(2)資産及び負債の純資産価額
資産及び負債の純資産価額とは当該適格合併に係る被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額に相当する金額をいう(法令8条1項5号ハ)。
(3)増加資本金額等
増加資本金額等とは以下の金額の合計額である(法令8条1項5号)。
- ① 当該合併により増加した資本金の額又は出資金の額
- 新設合併の場合は、その設立の時における資本金の額又は出資金の額
- ② 当該合併により被合併法人の株主等に交付した金銭並びに当該金銭及び当該法人の株式以外の資産の価額
- 株主等に剰余金の配当等として交付した金銭その他の資産及び合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産は除外する
適格合併は金銭等不交付要件を満たすため、②の金額は0である。
(4)自己の株式の発行を含めた最終的な資本金等の額の増加額
自己の株式の発行により会計上の資本金の額が増加する。その分税務上の資本金等の額が増加する。これとは別に資本金等の額に被合併法人の資本金等の額から合併により増加した資本金の額を控除した金額が加算される。抱合株式がなければ最終的に資本金等の額は適格合併により被合併法人の資本金等の額だけ増加する。
5.利益積立金額
以下の算式により計算した金額が利益積立金額に加算される(法令9条2項)。
被合併法人から移転を受けた資産の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時の帳簿価額 – 当該適格合併により当該被合併法人から移転を受けた負債の当該終了の時の帳簿価額 – 被合併法人の当該適格合併の日の前日の属する事業年度終了の時における資本金等の額に相当する金額
6.繰越欠損金の引継ぎ
適格合併の場合、要件を満たせば被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことができる。
Ⅲ.リソースの移転対価の受領者の税務(被合併法人の株主等の税務)
1.有価証券の譲渡損益
被合併法人の株主等は被合併法人に対する支配権、つまり株式等の対価を合併法人から受領する。適格合併は金銭等不交付要件を満たすため、(被合併法人の株主等の有価証券の譲渡損益の文脈で定義される)通常金銭等不交付合併に該当する。金銭等不交付合併に該当する場合、例外的に譲渡対価の額は被合併法人の株式等の帳簿価額とされ、譲渡損益は生じない(61条の2第2項)。金銭等不交付合併に該当する場合、被合併法人の株主等は基本的に合併法人又は合併法人の親法人等の株式を取得する。その取得価額は被合併法人の株式の当該合併の直前の帳簿価額相当額にみなし配当の金額と当該株式の交付費用を加算した金額である(法令119条1項5号)。
しかし適格合併時の金銭等不交付要件は合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合において当該合併法人以外の株主等に金銭等を交付しても金銭等不交付要件を満たす。それに対してこの場合は金銭等不交付合併の要件は満たさない(法法61条の2第2項参照、同種の例外規定がない)。そのためこの場合、原則通り時価で譲渡したものとして譲渡損益を認識する。
2.みなし配当
適格合併はみなし配当事由でないため、みなし配当は生じない。
Ⅳ.その他論点
(1)被合併法人の税務
内国法人が適格合併により合併法人にその有する資産及び負債の移転をしたときは、当該合併法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格合併に係る最後事業年度終了の時の帳簿価額による引継ぎをしたものとされる(法法62条の2第1項、法令123条の3第1項)。