グループ通算制度 加入時の時価評価

1.概要

ある通算グループに加入する法人がいる場合、①加入する法人と②加入する法人の株式等を有する通算法人は一定の資産を時価評価しなければならない。

法人がグループ通算制度の適用を受ける通算グループに加入する場合、原則として時価評価を行わなければならない。グループ通算制度はグループ全体を一体として課税する税制である。通算グループへのは合併と同じような効果をもらたすため、通算グループに加入する法人は加入時に原則として時価評価を行わなければならないとされている。時価評価を行う場合、評価益又は評価損は通算加入直前事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

通算グループに加入する法人が時価評価を強制される場合、その法人の株式等を有する通算法人はその株式を時価評価しなければならない。

2.一般的な時価評価

(1)基本的内容

加入する通算子法人が通算加入直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の評価益の額又は評価損の額は、その通算加入直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法法64条の12第1項)。

(2)時価評価が強制されない法人

以下の法人は時価評価を要しない(法法64条の12第1項各号)。

  • 通算親法人が法人との間に通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合で、かつ、次に掲げる要件の全てに該当する場合におけるその法人
  • その法人の完全支配関係を有することとなる時の直前の従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者がその法人の業務に引き続き従事することが見込まれていること。
  • その法人の完全支配関係を有することとなる前に行う主要な事業がその法人において引き続き行われることが見込まれていること。
  • 通算親法人が法人との間に通算親法人による完全支配関係を有することとなった場合で、かつ、その通算親法人又は他の通算法人と当該法人とが共同で事業を行う場合として政令で定める場合に該当する場合におけるその法人
  • 通算法人が通算法人に係る通算親法人による完全支配関係がある法人を設立した場合におけるその設立された法人
  • 通算法人を株式交換等完全親法人とする適格株式交換等に係る株式交換等完全子法人

(3)時価評価の対象となる資産

時価評価資産とは原則として以下の資産をいう(法法64条の12第1項)。

  • 固定資産
  • 棚卸資産である土地(土地の上に存する権利を含む)
  • 有価証券
  • 金銭債権
  • 繰延資産
    ただしこれらの資産のうち評価損益の計上に適しないものとして以下のものは時価評価資産とならない(法法64条の12第1項かっこ書き、法令131条の16第1項)。
  • 通算子法人となる法人が通算親法人による完全支配関係を有することとなった日以後最初に開始する通算親法人の事業年度開始の日の5年前の日以後に終了する通算子法人となる法人の各事業年度において圧縮記帳等の規定のの適用を受けた減価償却資産(法令131条の16第1項1号)
  • 売買目的有価証券(法令131条の16第1項2号、131条の15第1項2号)
  • 償還有価証券(法令131条の16第1項2号、131条の15第1項2号)
  • 資産の価額とその帳簿価額との差額が通算子法人となる法人の資本金等の額の2分の1に相当する金額又は1,000万円のいずれか少ない金額に満たない場合のその資産
  • 通算グループに加入する法人との間に完全支配関係がある内国法人の次に掲げる株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないもの(法令131条の16第1項4号)
  • 清算中のもの
  • 合併による解散以外の解散をすることが見込まれるもの
  • その通算子法人となる法人との間に完全支配関係がある内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの
  • 通算子法人となる法人が他の通算グループの通算法人である場合における他の通算グループ属する通算法人の株式又は出資(法令131条の16第1項5号)
  • 初年度離脱法人の有する資産(法令131条の16第1項6号)

(4)時価評価による評価損益の算入時期

時価評価による評価損益は通算加入直前事業年度の損金の額又は益金の額に算入する(法法64条の12第1項)。

3.加入に伴い時価評価が強制される法人の株式の時価評価

(1)基本的な内容

通算子法人となる法人についてその加入日においてその通算子法人となる法人の株式又は出資を有する通算法人の「その通算子法人となる法人の株式等」の評価益の額又は評価損の額は、加入日の前日の属するその通算法人の事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する(法法64条の12第2項)。

(2)適用されない場合

以下の場合は通算子法人となる法人の株式等の時価評価を要しない(法法64条の12第2項かっこ書き)。

  • 通算親法人との間に通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合として政令で定める場合
  • 初年度離脱加入子法人(法令131条の6第6項)