1.概要
グループ通算制度の開始に伴い原則として時価評価を行わなければならない。開始時における時価評価には①一般的な時価評価と②通算子法人株式の時価評価がある。時価評価を行わなければならない場合、通算開始直前事業年度において時価評価を行う。そのためグループ通算制度の開始に伴う資産の時価評価の規定は厳密には通算親法人又は通算子法人となる前の内国法人に適用される。この記事では便宜的に単に通算親法人・通算子法人と記載する。
グループ通算制度はグループ全体を一体として課税する税制である。そのためグループ通算制度の開始は合併と同じような効果をもらたすため、グループ通算制度の開始時に原則として時価評価を行わなければならないとされている。また合併では一定の支配関係などがある場合は簿価で資産負債の譲渡等がなされたものとされるが、グループ通算制度でも一定の法人は時価評価を要しない。時価評価を行う場合であってもすべての資産を時価評価する必要はない。この時価評価をこの記事では一般的な時価評価と記載する。
また時価評価をしなければならない通算子法人の株式を保有する通算親法人又は他の通算子法人は原則としてその通算子法人株式の時価評価を行わなければならない。これはその通算親法人又は他の通算子法人が時価評価を要しない場合も適用される。これをこの記事では通算子法人株式の時価評価と記載する。
2.一般的な時価評価(時価評価資産の時価評価)
(1)時価評価の要否
通算承認を受ける内国法人は、原則として時価評価を行わなければならない(法法64条の11第1項)。例外は通算親法人と通算子法人で異なる。通算親法人は、通算承認の効力が生じた後に通算親法人と通算開始時の通算子法人のいずれかとの間に完全支配関係が継続することが見込まれている場合、時価評価を要しない(法法64条の11第1項1号、法令131条の15第3項)。通算子法人は、通算承認の効力が生じた後に通算親法人と通算開始時の通算子法人との間に通算親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合、時価評価を要しない(法法64条の11第1項2号、法令131条の15第4項)。
(2)時価評価の対象となる資産
時価評価の対象となる資産を時価評価資産という。以下のものが原則として時価評価資産となる(法法64条の11第1項)。時価評価が必要な場合であっても、他の資産は時価評価を要しない。
- 固定資産
- 棚卸資産に該当する土地(土地の上に存する権利を含む)
- 有価証券
- 金銭債権
- 繰延資産
ただし上記の資産のうち評価損益の計上に適しないものとして以下のものは時価評価の対象とならない(法法64条の11第1項、法令131条の15第1項)。
- 最初通算事業年度開始の日の5年前の日以後に終了する各事業年度において、国庫補助金等の圧縮記帳等の適用を受けた減価償却資産
- 売買目的有価証券
- 償還有価証券
- 資産の帳簿価額が1,000万円に満たない資産
- 資産の価額とその帳簿価額との差額がその資産を有する通算親法人若しくは通算子法人の資本金等の額の2分の1に相当する金額又は1,000万円のいずれか少ない金額に満たない資産
- 親法人との間に完全支配関係がある内国法人で清算中のものなどの株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないもの
- 通算親法人又は通算子法人が通算法人である場合におけるその通算親法人又は通算子法人の有する他の通算法人(通算親法人を除く。)の株式又は出資
- 初年度離脱開始子法人の有する資産
(3)時価評価をする場合の処理
最初通算事業年度開始の日の前日の属する事業年度を通算開始直前事業年度をいう(法法64条の11第1項)。グループ通算制度の開始に伴う時価評価を要する通算親法人及び通算子法人は通算開始直前事業年度終了の時に有する時価評価資産の時価評価を行い、その評価益の額又は評価損の額を通算開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入しなければならない(法法64条の11第1項)。
3.時価評価が強制される通算子法人の株式等の時価評価
(1)内容
通算開始直前事業年度終了の時において一般的な時価評価を行わなければならない通算子法人の株式又は出資を有する内国法人を株式等保有法人という(法法64条の12第2項)。株式等保有法人が有するその通算子法人の株式又は出資の評価益の額又は評価損の額は、通算開始直前事業年度終了の日の属するその株式等保有法人の事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入しなければならない(法法64条の11第2項)。
(2)一般的な時価評価との関係
一般的な時価評価を要しない通算親法人及び通算子法人も、時価評価が強制される通算子法人の株式等の時価評価を行わなければならない。
一般的な時価評価を要する通算親法人又は通算子法人が時価評価が強制される通算子法人の株式等の時価評価を行わなければならない場合も考えられる。この場合、規定としては一般的な時価評価を行わなければならない(法法64条の11第2項かっこ書き)。ただし一般的な時価評価の規定によりその通算子法人株式の時価評価を行うため、その通算子法人の株式等の時価評価を行うという結果は変わらない。